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サイレンが鳴り響いている。
耳障りな音に目をひらいた孔明は、目のまえに唐突に、あきらかに悪魔に憑依されているとわかる人間が、至近距離にいることに気がついた。
見上げれば、おどろくほどに高い天井である。
大聖堂のように天をつく高さであるが、一面真っ白で、装飾はなにもほどこされていない。
前衛的ともとれるデザインの、どこかのビルの内部らしい。等間隔で、てんとう虫のような形のソフトライトが廊下を明るく照らしている。外光は入ってきていないようだ。
見れば、柱のあちこちには、ものものしい武装の兵士たちがいて、それぞれ武器を手にしているのが見える。つねづね思っていたのだが、重装兵というものは、どこか虫に似ている。
ヘルメットにゴーグル、マスクという出で立ちの彼らの人相はわからない。
かれらのうちのひとりが、軍用の携帯電話で、連絡をとっているのが見えた。
「正体不明の二名です! 古代人の服装をした男性二名。突如として標的のまえにあらわれました!
こちらのシステムでは、分析依頼を拒否されました。中央での分析を願います!」
「流砂の絶佳だな」
趙雲がつぶやいた。
いつでも、孔明よりも趙雲のほうが、事態の把握が早いのである。
孔明は自分の身を見下ろす。うさぎから、元に戻っている。
推理は容易だった。
巨大うさぎになっていた者を元にもどし、なおかつ未来に引き寄せることができるほど、強い力を持っている者が、そうそういるはずがない。
アイオーンの乙女が動いたのだ。
目のまえには悪魔。
もしかしたら、乙女は、怒っているのかな?
「ぬぬ、せっかく主公たちと再会できる、という、いい場面であったのに」
こぼす孔明に、趙雲は言った。
「仕方なかろう。もともと、俺たちは、あまり世界に干渉してはならぬ身だったのだ。姿を見ることが出来ただけでも、運が良かったのかもしれないぞ。
さあ、それよりも、気持ちをあらためて、まず目のまえのものを片付けなければならぬ」
「あなたはプロだよ、ほんとうに」
悪魔に憑依された人間の姿は、気の毒なほどにねじれていた。
首の向きが、ありえないほどに直角に曲がっており、その曲がっているところから、あらたに別の首が生じている。
その首は、もとの肉体のもち主の風貌とはかけ離れたもので、本来の首よりも、二まわりほど小さい。
首狩り族のつくる首のミイラほどの大きさだ。
皮膚は干上がり、ぬめぬめとした粘液を全身からしたたらせている。
「無惨な」
孔明は柳眉をしかめた。
これでは、憑依された人間は、もう助からないだろう。
いくら弱みにつけこまれ、このような姿になったものだとしても、この状態は、哀れのひと言に尽きた。
すると、唐突に、悪魔の小さな頭の口が光った。
「いかん!」
孔明も趙雲も、咄嗟に身をひるがえす。
悪魔のちいさな頭の口から、光弾が発せられたのだ。
すぐに飛び退った二人であるが、光弾が穿った壁は、しゅうしゅうと音をたてて溶解している。
「ええい、被災した成都中の民を助けあげたばかりで、霊力も満タンではないというのに、次から次へと、人使いの荒い! 見ておれ!」
見れば、悪魔はふたたび攻撃をするべく、口から光を発しようとしている。
孔明はすぐさまおのれの指を鉤詰めのように曲げて、そのまま大きく空を裂く素振りをした。
とたん、ぎりぎりと、耳をつんざく音を立てて、床をはげしく抉りながら、線条のいくつもの空気の塊が地を走り、悪魔の身体を直撃した。
そのたった一度きりの攻撃で、悪魔は、一瞬で身を引き裂きさかれた。
※さて本日より未来?に戻ってきました。今回の連載は、ほんとうにいつもより作るのに時間がかかっています(>_<) ニッキ連載としては題材がねぇ。これをうまく終了させられたら、次の連載は、もっと単純なお話をアップしようか、それともまったく別のことを始めようかと思案中です。まずは、この連載に集中します(^^ゞ
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