● おまけの広場 ●
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2007年7月22日(日)
流砂の絶佳 百一

鉾を手に、兎怪を討ち取ろうと意気込む魏延。
しかし、その顔を見る趙雲、そしてもなか、こと孔明の心中は複雑であった。
両足をぐっと大地に踏みしめて、巨大うさぎをねめつける魏延であったが、両者の、自分を見る独特のまなざしに、うろたえる。
「な、なんだ? やめろ、兎怪め! 俺を生ぬるい目で見るな! 趙子龍、貴様まで!」
「おまえは漢中太守ではなかったのだっけ?」
趙雲がいうと、魏延は顔を真っ赤にしつつ、怒鳴るようにして答えた。
「なんだ、嫌味か? 俺がそのような高位にあるわけなかろうが! 
俺は主公より成都の治安をお預かりしている身だぞ。なにゆえ漢中にいなくてはならんのだ! 自分だって、翊軍将軍。俺と変わらぬ身のくせして、まったく」

ぶちぶち言う魏延をまえに、そうだったのか、とつぶやく趙雲に、孔明が説明した。
「三国鼎立が平和目的で、じつに穏便におこなわれたので、三国はそれぞれ、わたしたちの世界ほどに、他国の侵略を恐れなくてよくなったのだよ。
だから、主公も魏文長のような、野戦においてもっとも能力を発揮できる、好戦的な人物を漢中太守に抜擢しなかった」
ちなみに、孔明がしゃべっているのはアトラ・ハシースの言葉で、魏延らにはわからない。
「では、いま漢中には、だれがいるのだ」
「馬良と龐統」
思わず、趙雲は、孔明を振り仰いだ。
「なんと、龐士元は、この世界では生きているのか!」
「面白いといったら、本人に叱られてしまうが、わたしたちの世界においては、蜀の攻略のさなかに戦死してしまったが、この世界においては、蜀の桟道で事故にあったものの、命にまったく別状はなく、そのままふつうに入蜀したことになっている」
「すると、文官の一の席は、おまえや法正ではなくて、龐統ということか」
「そこがまたちがうのだな。あくまで文官のトップは法正だ。そのあたりが龐統のうまいところというか、気遣い上手なところで、この世界では、あくまで入蜀は侵略ではないから、荊州と益州をうまく合併させてひとつにまとめた人間が、功績がもっともあるとされているのだ。
益州人士をまとめて主公に仕えるよう説得した法正と、それを助けた龐統が、その功績がもっともあり、一方で、もともとの主公の家臣や荊州人士をまとめたわたしは、その次、という順番だ」
「ふうむ、となると、このままいけば、おまえは、この世界では丞相の位には昇らないのではないか」
「そこはそれ、紆余曲折を経て、なんだかんだと丞相になる予定だが、どうも雲行きが怪しくなってきたな。そもそも、この世界の、ほんもののわたしはいなくなってしまったし、その代わりを勤めるわたしが、このありさまだしな」
と、うさぎはぼやくのであるが、ふと、ぱし、と両の手を打った。
「いかん、すっかり忘れていた。この世界に派遣されることを士元から、自分に対して『よろしく』と伝えて欲しいと言われていたのだ。仲達に手紙を書いている場合ではなかったな」
「あとで伝えろ、あとで」

「趙子龍! きさま、もしや、その兎怪と通じておるのか!」
と、二人の会話を遮ったのは、魏延である。
見たこともない巨大うさぎをまえに、恐怖とけんめいに戦って、武器をかまえている魏延からすれば、目のまえの趙雲は、まったく緊迫感もなく、うさぎに寄り添うようにして、なにやらぶつぶつ言っている(ように、魏延には見える)のだから、いらだつのも無理はない。
「兎怪、兎怪と。こいつには、ちゃんと名前がある。『もなか』だ。『もなか』と呼んでやれ」
「も? は?」
「も・な・か」
「もなか?」
ぽかんとする魏延であるが、趙雲はまったく無頓着に、そうだ、こうしよう、などと一人合点して、それから言った。
「どちらにしろ、おまえにこいつは倒せない。
ついでですまぬが、ひと走り宮城へいって、主公に、このうさぎには、まったく害意がないことを伝えてくれぬか」
「なんだと?」


※ようやく復活。これから徐々に元に戻していければと思います。状況次第なところもあって、確かな予定をお知らせできないところもあるのですが、精一杯やりますので、どうぞお付き合いいただけたらと思いますm(__)m

2007年7月23日(月)
流砂の絶佳 百二

「俺に兎怪が倒せぬと申すか! やってみなければわからぬ。そこをどけ、趙子龍!」
侮辱されたと思ったか、いいざま、魏延はいさましい雄叫びをあげると、鉾を振りかざして、趙雲と孔明へと突撃をかけてきた。
背後にいて、魏延と趙雲のやりとりを、息を呑んで見守っていた兵卒たちも、その雄叫びを合図に、盾を突き出した状態で、前進してくる。
孔明は、それを見ると、
「仕方ないなあ」
とつぶやき、広場をみまわした。
ちょうど広場には、市場に荷をはこぶ水牛や馬たちのための飼い葉が、こんもりと積まれたままになっている。
どうやら荷物だけは運んできたものの、巨大うさぎが近づいてきているというので、人と牛だけで逃げ出したものらしい。
孔明は、それをつまむと、両手で、飼い葉をぎゅっとお結びにする。
趙雲はといえば、しゃがみこんでいるうさぎを守るような形で、槍を手にしているのだが、その槍は孔明が霊力でもって生み出したものであるから、魏延や、その背後の兵卒たちの持つ武器では、まったく太刀打ちできない。
「ただ倒すだけならばたやすいが、怪我をさせずに退却されるほうがむつかしいな」
槍をかまえつつ、どう攻撃をかわすかを考える趙雲。
その背後では、孔明が、器用に飼い葉のおむすびを作りながら、つぶやいた。
「どうしたわけか、あなたも魏文長とは相性がわるいな。いつもはもっとうまく交渉するのに、いまのは、見事にことばが足りないよ」
「そうか? なんと言えばよかったのだ」
「わたしが時の社から遣わされた神獣だ、とかなんとか言えばよかったのさ。そうすれば、魏文長もおそれて、あなたのことばに従っただろうに」
「ああ、そうか。どうもあいつの顔を見ていたら、生前の苦労を思い出して、ついつい、つっけんどんになってしまった。いまから言っても間に合わないだろうな。
おまえ、うさぎの身でも霊力は使えるのだろう。風であいつらを吹き飛ばすことはできないのか」
「できるけれど、そうなると怪我をする者が増える」
「で、なにを作っている」

趙雲の問いに、うさぎは、にまっ、と笑うと、できあがったおむすびを得意そうに、一度、手のひらでぽん、と投げて、それから、わあっ、と、ときの声をあげて押し寄せてくる魏延や兵卒たちに向けて、飼い葉のおむすびを、勢いよく転がした。
「もなか選手の第一投!」
飼い葉は、いきおいよくごろごろ転がると、ちょうど上空から見ると、扇状になっていた魏延を中心とした兵卒たちを、ボーリングのピンを転がすように、つぎからつぎへとなぎ倒した。
といっても、飼い葉のおむすびの威力ではなくて、飼い葉のおむすびを避けようとした兵卒たちが、密集して動いていたために、両隣の兵卒たちにつまづいて、つぎつぎと転んだのである。
しかし魏延はというと、まともにおむすびの直撃をうけて、大路の真ん中でひっくりかえってしまった。

※毎日書かないと勘がなくなるのは、疲れているから、というだけではないようです。スポーツと一緒なんだなー、と感心したり。リハビリ小説、現在A4で25枚まで書きあがり。通して書いてみると、ぽつぽつとおかしな部分、不足している部分もあり。体裁が整い次第、アップいたします。お時間ありましたら見てやってくださいまし(^^ゞ

2007年7月24日(火)
流砂の絶佳 百三

ひっくりかえった魏延に、趙雲は近づくと、かがんで、その手を差し伸べる。
「だいじょうぶか」
おむすびの直撃を受けて引っくり返ったといっても、もともとが飼い葉であるから、やわらかく、魏延のほうも怪我をしている様子はない。
ただ、趙雲のうしろでは、孔明が大喜びして、
「ストライクー!」
と、はしゃいでいる。
そんな巨大うさぎを、成都の兵卒らは、おっかなびっくりと、物陰からうかがっている。
もうだれも、魏延のように、勇敢に立ち向かおうとはしない。

その魏延は、趙雲の手をまえにしても、なかなか、それを掴もうとしなかった。
魏延が動くのを待ちながら、趙雲は、そういえば、基本世界の俺も、こいつとは口論したり、小競り合いしてばかりいて、こんなふうに助けることもなかったな、と考えていた。
お互いに、妙にものわかりよく、お互いの境界を侵害しないようにしていたと思う。それがいいことであったかどうかとなると、ずいぶん怪しい。
「遠慮するな。怪我はないか」
趙雲が言うと、魏延は、しばしおどろいた表情を見せたが、やがて、鼻息をあらくすると、口をまげて言った。
「遠慮はしておらぬ。怪我もしておらぬわ」
「ならばよい」
意地っ張りめ、と思いつつ、手を引く趙雲であるが、ひとりで立ち上がった魏延は、憮然とした表情を浮かべてはいるものの、どこか居心地のわるそうな、一方で、困惑しているような様子が見てとれる。

おや、もしや照れているのかなと、趙雲は意外に思った。
と、同時に思う。
そういえば、こいつとは、ほんとうに表面的なところでしか付き合ってこなかったから、親身に声をかけることもなかった。
それは、もしかしたら、この世界の俺もそうなのかもしれない。

おおいに反省し、趙雲は立ち上がった魏延に言う。
「もうわかったと思うが、あの巨大うさぎには、害意はないのだ。そして、ただの獣ではない」
どうやら、孔明は趙雲のことばが聞こえたらしく、うんうんとうなずいている。
「では、なんだ!」
「アイオーンの乙女より遣わされた……ええと、神獣なのだ」
一部、嘘ではない。
「成都を悪魔の侵略から守るために遣わされた神獣であるから、主公にもその旨を伝えて欲しい。どうであろう、頼まれてくれるだろうか」
自然と低姿勢になった趙雲であるが、これが魏延には好印象をあたえたらしく、魏延は、また大きく鼻を鳴らすと、意外にも素直に、物陰に兵卒たちと一緒に隠れていた愛馬を引き出して、
「伝えればよいのだな」
と言って、宮城へと向かっていった。

「そうか、こういうふうにすればよかったのか。いまになって知るとはな」
つぶやく趙雲に、孔明は市場にすわったまま、言った。
「ほんとうに、あとから後悔することは多いけれど、魏延のことはそのひとつだな」
「俺たちがたどった歴史を、この世界の俺たちがたどらないですむように動くことは、処罰の対象になるだろうか」
言いながら、となりに並んだ趙雲に、孔明は、首を向けると、笑った。
「あなたの良いと思うふうにしてみようよ。わたしも協力する。処罰なんぞは怖くないさ。きっと、いいことがあるよ」
「だといいが」
「あなたが良いと思うことだもの。間違いはない……って、おや? あれはなんだろう」
孔明の視線には、ちょうど成都を守る長城のさらに向こうに、並列になって押し寄せてくる軍勢の姿が見えた。


※先行してブログにつづいてニッキをアップ。さあて、リハビリ小説は夕方以降のアップを予定しております。もー、「生きててよかった」と大げさなほどうれしくなる青空を眺めつつ、がんばりますです(^v^)

2007年7月25日(水)
流砂の絶佳 百四

一方そのころ。
孔明の使い魔である風の霊鳥・飛廉の背にのって、アイオーンの乙女の気配をもとめて飛び回っていた仲達であるが、かすかな霊力をもとめて成都中を飛び回るものの、その成果はまるでない。
困ったのう、と思っていると、ふと、ただならぬ霊力の気配を、西の方角から感じ取ることができた。
「やや、もしやアイオーンの乙女か。飛廉や、すまぬがもうすこしがんばって、西に向かって飛んでくれい」
物言わぬ鳥・飛廉は、仲達のことばにうなずくように、前方に長く伸ばした首を、上下に動かした。

そうして、風に乗って飛んでいると、地上にて、弾丸のようないきおいで、成都に向かって馬を疾駆させている武者の姿が目に入ってきた。
「この早朝に、何事であろう。巨大うさぎ出現の報を聞いて、手柄をたてようと成都に向かっているのだろうか。
だとしたら、見上げた心がけであるが、しかし以前とちがって、その身はうさぎなれど、いまの諸葛亮は十分にアトラ・ハシースの力がふるえる。
これは親切に、およしなさいと教えてあげるのがよかろうのう。飛廉、戻るかたちになるが、あの者と並走してくれ」

仲達の命令どおり、飛廉はくるりと旋回して、全速力で駆ける馬の横に並んだ。
飛廉の背中にいる仲達は、馬上の男を見て、
「ふむ、知らぬ顔だ」
と思った。
名前を聞けばわかるかもしれない。
生前仲達は、蜀の主だった武将たちの人相は、細作から伝え聞いてはいた。
だが、だからといって、よほど特徴がないかぎり、初対面の人間の顔をみて、ああ、これは○○だな、と思い出して判断するのはむずかしい。
アトラ・ハシースやアストラルになった者は、蜀のなかでも稀なほうなので、いまもって初対面の者のほうが多いのだ。

「おーい、そこの武者どの。どちらへ参られる?」
仲達がたずねると、律儀なことに、馬上の武者は前方を睨みつけながらも、すぐに答えてきた。
「話しかけるな、舌を噛む! これから西の谷へ向かって、若君のご命令を伝えに参るのだ!」
「若君とは、だれのことぞ。劉左将軍のご子息のことではあるまい」
「話かけるなと言っておろう! 錦馬超だ!」
「錦馬超とな? とすると、ほほう、思い出したぞ。そなた、従弟の馬岱か。
人相書のコメントによれば、『有能だけど、ちょっと地味。名誉欲はあんまりないので、賄賂作戦は失敗するかも。正攻法でがんばって』とかなんとかあったのう」
「なにをわけのわからぬことを……」
馬岱は言いながら首を仲達に向けるのだが、そこではじめて、飛廉の背中にいる垂れ耳うさぎと目があった。
「!?」
おどろきのあまり、ことばをなくす馬岱。
おどろきすぎて、手綱裁きをまちがえた。
馬はとつぜんに棹立ちになると、そのまま馬岱を地面に叩きつけてしまったのである。

※昨日はまたもやギリギリになってしまい、申し訳ありませんでした(>_<) 昨日アップ分のお話、序章については長い独白があり、以降がどんどん現実の話が展開していく、という内容。あえて説明部分をカットしてあるので、状況が掴みづらいお話で、実際にあったことは、ヒントやセリフから読んで組み立てていただく、という、実際に孔明や趙雲と同じ状況に読む方もなっていただく、という意図のものでありました。長いお話なのですが、最後まで読んでくださった方、ありがとうございます(^^ゞ

2007年7月26日(木)
流砂の絶佳 百五

「うぉい! 大丈夫か!」
仲達は飛廉の高度を下げさせると、その背中から、ぴょんと降り立って、馬とともに地面にもんどり打っている馬岱に近づいた。
馬岱はというと、はしばしを打った痛みに悶絶しながらも、仲達がちかづくと、ぱっと起き上がって、無情にも、近づいて、怪我がないだろうかと覗き込んできたうさぎを、
「寄るな、化け者!」
と、思い切り払いのけた。
うさぎは
「うぁぷし!」
とナゾの奇声をあげてひっくり返るのであるが、これまた回復力のよいところを見せて、むくりと起き上がり、ついつい反射的に攻撃してしまったものの、恐怖のあまりにいまは硬直している馬岱を、きっ、と目線をきつくして、にらみつける。

「なにをするかー! 親父にだって、ぶたれたことないのに! 
蜀の連中、ほんとにひどすぎ! あえて言おう、カスであると! ふーんだ!」
きいきいと抗議の声をあげるうさぎに、馬岱はなおさら硬直する。
ふつう、うさぎはしゃべらない。

馬岱の乗っていた馬にしても、もともとが限界であったのか、立ち上がる気配がなく、主人の横で、大きく息をついている。
「おうおう、かわいそうにのう。乗り手は、ちっともかわいそうではないけれど」
言いながら、仲達は、全身に汗をかいている馬の鬣を撫でる。
すると、それまで虫の息にすら見えていた馬が、しゃきりとなって、呼吸もふつうになった。
仲達が、霊力をすこしだけ馬にわけてやったのだ。

「まったくもう! わたしのような愛らしい化け物が、この世におるか! 
どーして『これだけ可愛いのだから、きっと天使にちがいない』と思わぬか! ええ?」
ぷりぷり怒るうさぎに、馬岱は、からからに乾いている口腔を舌で湿らしてから、たずねた。
「天使というと、もしや時の社のご使者? すると、もしや、あなたがアイオーンの乙女?」
「なわけあるか! わたしは乙女ではない! アトラ・ハシースなるぞ!」
「なんと!」
驚愕に目を見張る馬岱に、仲達は、すこしばかり機嫌をよくして、胸を張った。
「ぬふふん、おどろいておるな。というわけで、あらためて尋ねるが、そなたは錦馬超の使者として、いったいどこへ向かっていたのだ」
仲達の問いに、馬岱は、はっとなって、その場に平伏した。
「それをお答えするわけには参りませぬ。どうぞご容赦を!」
「容赦するわけにはいかんのだ。そなた、いま西の谷のほうから駆けてきたな。向こうになにがあ、る……?!」
言いかけて、仲達は言葉をなくした。
西の方向を見れば、鈍い地響きをたてながら、何万という騎馬兵が、土煙をたてて、並列で押し寄せてきているところだった。
「いかん!」
騎馬兵は、仲達や馬岱には、目もくれずに成都へ向かっている。


※そうか、世間は夏休みですね。窓を開けていると、隣近所のお子様方の元気な声が聞こえてきます(^_^;) 活気があって夏休みっぽいです。さて、アップですが、どれだけ、いつアップするか、まだ迷っている状態だったりします。なんだかあまりにわやくちゃになってますものね~。もう少々お待ちくださいm(__)m

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