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孔明と趙雲を目のまえにして、きつねと呼ばれたファ参謀総長は、顔をりんごのように真っ赤にしていた。
「これは怒るかな」
活火山のように怒鳴り散らすかな、この男の先祖も、家鴨のようにうるさい男だった、と孔明がなつかしく思い出していると、ファ参謀総長は、しばらく釣り上げられたばかりの魚のように、ぶるぶる震えていた。
が、急にころっと表情を変えて、低姿勢に腰を低くすると、手もみさえして、顔に満面の笑顔を浮かべた。
じつに胡散臭い。
が、そう見えることに、本人は頓着していない様子である。
「ようこそ、ようこそいらっしゃいました、アトラ・ハシースとアストラルのお二方に、こうしてお会いできるとは光栄です。
このウスラトンカチから聞いたことは忘れてください。こやつは昔から人の悪口しか言わんのです。大学時代からそうでした。
思うに、バルエフスキー、オッペンハイマー、ファ。この三人が軍大学の三英などと呼ばれておりましたが、結局、出世したのはこのファだけ。しかもこのオッペンハイマーときましたら、わたしに婚約者を奪われたのがよほど悔しかったのか、あてつけのように『独身生活を楽しむ会』なるあやしげな秘密組織のメンバーになりまして、まったくどうしたものやら。
バルエフスキーなんぞも、このオッペンハイマーの妹のベリンダと婚約までしておきながら、結婚式当日になって、なんと昔の恋人に奪い去られるテイタラク。さらには未練がましく自分のシステムに『Belinda・O』などと名付けているのですから、粘着質もよいところ。
こんな性質が災いしたのでしょうな。軍大学では抜群の成績をおさめながらも、国王の期待をおおいに裏切りまして、国王直属の親衛隊には入らずに、クロノス機関に入ってしまうのですから、目も当てられません。
しかも大恩ある国王陛下に申し訳ないとも思わないのか、この男ときましたら、今度は、ナジエ姫の追っかけをはじめましてね。これが図々しいの、馴れ馴れしいの、しつこいのと、大騒ぎ。おととし施行されました、ストーカー防止条例は、この男のために施行されたようなものです。
こういう問題児があれこれとくだらぬことを口にして、さぞかしお耳を汚したことでしょう。どうぞこのファに免じて、お許しいただきたい。
でもって、一緒にぱちりと写真に収まってくれると、感涙ものなのでございますが」
「おまえの目的は、ただ最後の、一緒に写真を撮らせてくれ、だろう!」
オッペンハイマーが、わかりやすいことに、その額に青筋をたてて言うと、ファは、まったく悪びれる様子もなく、しれっと答えた。
「悪いか。おまえは撮ったのだろう、写真」
「撮るものか。まったくミーハーめ。しかもあいかわらずの大長舌。お二人とも、唖然としてらっしゃるぞ」
たしかに孔明も趙雲も、唖然としていた。
先祖返りでもおこしたか、それともクローンか、というほどに法正そっくりなこの男は、趣味から、そのポリシーに至るまで、どうやらそっくりであるらしい。
つまり、『長いものにはくるりと巻かれろ、隙を見せたら後ろからグサリ』これである。
※すこしずつ終盤に向かっています。長いお話だなあ…次の連載もぼんやりとですが決めています。今回は短いものになるかと思われます。さー、あと一分張り。がんばろう。
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