● おまけの広場 ●
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2007年8月11日(土)
流砂の絶佳 百二十一

孔明と趙雲を目のまえにして、きつねと呼ばれたファ参謀総長は、顔をりんごのように真っ赤にしていた。
「これは怒るかな」
活火山のように怒鳴り散らすかな、この男の先祖も、家鴨のようにうるさい男だった、と孔明がなつかしく思い出していると、ファ参謀総長は、しばらく釣り上げられたばかりの魚のように、ぶるぶる震えていた。
が、急にころっと表情を変えて、低姿勢に腰を低くすると、手もみさえして、顔に満面の笑顔を浮かべた。
じつに胡散臭い。
が、そう見えることに、本人は頓着していない様子である。
「ようこそ、ようこそいらっしゃいました、アトラ・ハシースとアストラルのお二方に、こうしてお会いできるとは光栄です。
このウスラトンカチから聞いたことは忘れてください。こやつは昔から人の悪口しか言わんのです。大学時代からそうでした。
思うに、バルエフスキー、オッペンハイマー、ファ。この三人が軍大学の三英などと呼ばれておりましたが、結局、出世したのはこのファだけ。しかもこのオッペンハイマーときましたら、わたしに婚約者を奪われたのがよほど悔しかったのか、あてつけのように『独身生活を楽しむ会』なるあやしげな秘密組織のメンバーになりまして、まったくどうしたものやら。
バルエフスキーなんぞも、このオッペンハイマーの妹のベリンダと婚約までしておきながら、結婚式当日になって、なんと昔の恋人に奪い去られるテイタラク。さらには未練がましく自分のシステムに『Belinda・O』などと名付けているのですから、粘着質もよいところ。
こんな性質が災いしたのでしょうな。軍大学では抜群の成績をおさめながらも、国王の期待をおおいに裏切りまして、国王直属の親衛隊には入らずに、クロノス機関に入ってしまうのですから、目も当てられません。
しかも大恩ある国王陛下に申し訳ないとも思わないのか、この男ときましたら、今度は、ナジエ姫の追っかけをはじめましてね。これが図々しいの、馴れ馴れしいの、しつこいのと、大騒ぎ。おととし施行されました、ストーカー防止条例は、この男のために施行されたようなものです。
こういう問題児があれこれとくだらぬことを口にして、さぞかしお耳を汚したことでしょう。どうぞこのファに免じて、お許しいただきたい。
でもって、一緒にぱちりと写真に収まってくれると、感涙ものなのでございますが」
「おまえの目的は、ただ最後の、一緒に写真を撮らせてくれ、だろう!」
オッペンハイマーが、わかりやすいことに、その額に青筋をたてて言うと、ファは、まったく悪びれる様子もなく、しれっと答えた。
「悪いか。おまえは撮ったのだろう、写真」
「撮るものか。まったくミーハーめ。しかもあいかわらずの大長舌。お二人とも、唖然としてらっしゃるぞ」
たしかに孔明も趙雲も、唖然としていた。
先祖返りでもおこしたか、それともクローンか、というほどに法正そっくりなこの男は、趣味から、そのポリシーに至るまで、どうやらそっくりであるらしい。
つまり、『長いものにはくるりと巻かれろ、隙を見せたら後ろからグサリ』これである。

※すこしずつ終盤に向かっています。長いお話だなあ…次の連載もぼんやりとですが決めています。今回は短いものになるかと思われます。さー、あと一分張り。がんばろう。

2007年8月12日(日)
流砂の絶佳 百二十二

ファ参謀総長は、孔明と趙雲が承諾の返事をしないうちから、いそいそと、古い型式のカメラを取り出した。
古いものは、古いカメラで撮るほうが味がある、と思っているようである。
そして、カメラを構えようとして、ファ参謀総長は、はっと思い出したように顔を上げると、オッペンハイマーを指さした。
「おっと、写真を撮るまえに! オッペンハイマー、貴様、参謀総長のわたしに断わりもなく、レベル4の情報を勝手に他国人に漏らしたな! これは軍法会議ものだ! 覚悟しておけ!」
指をびしりとオッペンハイマーの鼻先に向けるファであるが、オッペンハイマーのほうが上手である。まったく顔色を変えずに、答えた。
「お言葉ですが、参謀総長、アトラ・ハシースとアストラルのご両者に、要求される全レベルの情報を開示してよい、すべての建物への侵入も許可すると、事務総長権限での特別命令が出されました。
あなたのシステムには、事務総長より連絡がなかったのですか」
「むむ」
ファは大いに不快そうに顔をしかめた。どうやら、ここでも、きつねに味方する人間は少ないようであった……

オッペンハイマーのモニタールームから出て行く寸前に、ファ参謀総長は、くるりと振り返ると、言った。
「イカン、お二人に会えた興奮から、大事なことを伝えるのを忘れていた。
先ほどの悪魔侵入の件で、異端審問委員会はナジエ殿下の関与を突き止めた。
いま国王の親衛隊が、ナジエ殿下の逮捕に向かっているはずだ」
「莫迦な! 悪魔の侵入から2時間も経っていないのに、そこまで特定できるものか!」
「それが出来たのだ。悪魔に憑依されていた男は、ナジエ殿下の侍女の親族。
おそらく王宮を混乱に陥れ、その機に王位を簒奪しようと狙ったものにちがいない」
ファは歌うように言いながらも、部屋に浮かぶナジエのフォログラムと目が合うと、居心地が悪そうに顔をしかめた。
「ともかく! そういうわけで、国王は、反逆者を逮捕するため、システムの一部停止を望んでおられる。じき、命令があるだろう。
そのときは速やかに実行せよ」


※また神経内科行き? めんどうだなあー。って我侭言っている場合じゃない。早く直さねば。ところで、交通機関のラッシュはすごいようですね。今日はみなさまお盆休みかな? おでかけ中の方、お気をつけてお帰りくださいましねー。

2007年8月13日(月)
流砂の絶佳 百二十三


ファ参謀総長が、孔明らと写真を半ばむりやり撮影したあと、待っていたかのように、親衛隊だという黒地に角ばったデザインの制服を着た男たちがモニタールームへとやってきた。
システムの一部停止の国王命令を伝えにやって来たのである。
オッペンハイマーは意外にも冷静にそれを聞き、抗弁することなく、了承の意を伝えた。
親衛隊員たちは、孔明たちにも目もくれず、すぐにモニタールームを出て行く。かれらは男も女もいたようだが、どれもすさまじいほどの肉体美で、鍛え抜かれた筋肉の束を、制服の上からも見てとることができた。
「かれらは『神農府』の研究の成果。つまり、改造人間です。国王が、異民族の孤児のなかから、とくに運動能力に優れた子供を選び出し、洗脳をほどこしたのが彼らです。
肉体にしても、自ら鍛錬を積んでああなったのではない。すべては強烈な筋肉増強剤の結果です。
ひどい副作用をもつ薬で、親衛隊の隊員の平均寿命は35歳と極端に短命です」
「それでは、組織として成り立つまい」
「国王が必要としているのは、自分に決して逆らわない『盾』です。『人間』としての繋がりを、かれらに求めてはいないのです。
おのれの血を引く子供に対しても愛情を持てない人物ですから、まして他人などに愛情を示すことはできない。しかし」
オッペンハイマーは片眼鏡の下の顔を曇らせると、悔しそうに言葉をつむいだ。
「こうなれば、なりふりは構っておられない。王女が逮捕されてしまったら、反国王派は、一気に駄目になってしまうでしょう。国際社会は王女に大きく期待をしていたのですが、これで流砂の絶佳は、ますます孤立する」

孔明と趙雲は、無言のまま、目線を交わした。
いままでの経験上から、オッペンハイマーが続いて何を言うか、見当がついたからである。
交渉の場において、孔明が先に言葉を発さないときは、自然と趙雲がその役割をになう。
職務に徹することのできる非情さ、という性質においては、孔明よりも趙雲のほうが勝っているのだ。

「すまないが、われわれはこの世界の悪魔を追放しにきたのであって、悪魔じみた人間を追放しにきたのではない。
われわれが手を貸せば、たしかに国内の問題のいくらかは片付くかもしれないが、しかし、それはわれわれの存在意義を不明瞭にする行ないだ。
あくまで『世界の歴史』は、只人が自ら作り出すものでなくてはいけない。われらが介入することを期待しないでくれ」
趙雲のきっぱりした淀みのない口調に、オッペンハイマーは沈黙した。
あきらめたのか、覚悟を決めたのか、面長の顔からは読み取れない。
「行こう、俺たちは、あまりここに長居しないほうがいいようだ」
部屋を出るようにうながす趙雲に、孔明は言った。
「けれど、後味がわるいな」
「仕方あるまい。アトラ・ハシースは、あくまで歴史の影に存在しなければならないものだ。同情したいのは俺も同じだが、これ以上、かれらに深く関わってはいけない。行こう」


※またもお待たせしている状態で申し訳ありません。計画していることがありまして、あらためて別ファイルでお知らせする形になるかと思いますが、こちらの連載はこうせいニッキから別枠に移動させる予定です。まー、いつものパターンだったりします(-_-;) お知らせは近日アップできるかな、と思っています。

2007年8月15日(水)
連載休止のおしらせ。

みなさま、こんにちは、はさみのです。
別ファイルにてお知らせしたとおり、今後、HPの運営を変更するにあたりまして、誠に勝手ながら、現在、連載中の『流砂の絶佳』を一時休止することになりましたm(__)m
楽しみに来てくださっていた方、申し訳ありません(>_<)
理由はいろいろとありますが、今後、『こうせいニッキ(おまけページ)』そのものはgooブログの『はさみの世界・出張版』へ移動する形となります。
ブログに移行することにより、これまで閲覧が厳しかった携帯でのお客様も、すこし見やすくなるのでは、と思っております。
あたらしいブログにて発表する作品は、『飛鏡、天に輝く』。本編の赤壁編となります。
当初は、赤壁はあまり詳しく書かないようにしようかなと思っておりましたが、やるだけやってみよう! と思い立ちまして、よりHPの内容を濃くする、という意味もこめまして、毎日の連載のほうに移行させることになりました。
どこまでやれるかわかりませんが、見てやっていただけると、とてもうれしいです♪

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今後とも、はさみの世界をご愛顧いただけたらと思いますm(__)m

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