けっかはっぴょう番外編
三国本音対談! 自分の上司のここがイヤ!

後編

B氏「ところでここで『そのほか』にはいった二人をここで紹介してみよう」
C氏「蜀のサイトに魏の二人が入ってきたのは、これいかに。ってか、わたしはダメですか」
A氏「ではコメントはこちら。あらたにくださった方、どうもありがとうございました」

≫賈ク文和。はさみの様のサイトには一度も登場なさってませんが、この人について行けば安全だと思いました。サイトの志向と関係なくてスミマセン(^^;)【授矢│07/02/19 20:17:23】

C氏「へー、そうなのですか」
B氏「いや、そうなんじゃないか」
A氏「気のせいか、ほかのコメントよりも温度差が感じられるような」
B氏「はげしく気のせい。自分以外の魏の人間が誉められているのが悔しいとか、そういう理由じゃないから」
C氏「困った人だなあ。ちなみにこのお方は、董卓からはじまって、四回も転職をした方でして、丞相や周都督とは、ある意味、真逆の生き方をなさった方ですね。
とはいえ、おのれの能力を最大限まで活用して生きて、しかも高齢で病没」
B氏「よく評定でもさー、読みが甘いとか経験不足とか言って、叱られたものだ。しかも小癪なことに、意見が的確で、ほとんどまちがえないのだよ」
A氏「なるほど、曹丕にとっての、うちにおける張昭どののような存在でしょうか」
B氏「えっ、いやだなあ。曹公の代の話かもしれないじゃん? なんでずばり曹丕って限定するわけ?」
A氏「もう思いっきりばれてますよ」
C氏「わたしはこういったタイプのお方とは、あまり知り合わなかったというか、降将というものにあまりいい印象がないのですが、実際にどんな方だったのです」
A氏「おや、いい印象がないとは、なぜですか」
C氏「いやあ、血気盛んなのを抑えなくちゃいけなかったり、暗殺されたりと、いろいろとありまして。
って、わたしの話はどうでもよいのです。いかがです、Bさん」
B氏「んー、ひとことで言ったら、ぬらりひょん?」
A氏「妖怪ですか」
B氏「ともかく、つかみ所がないうえに、おのれの身のうちに本音をしっかり隠しているところのあるお方であった。まあ、いろいろとそのあたりも含めて勉強させていただいたが。
たしかにこのひとの家族だったら、人を見る目は磨きぬかれておるから、不安定ながらも命の保証はありそうだが、部下となると、わたしは怖いかな。
いまひとつ考えが読めない方なので、けんめいに仕えても、意外とあっさり見捨てられかねん。
真の策士と評される者で、人々から慕われまくっていた、という人物がすくないのは、やはりみな総じて、似たようなところがあるからかもしれぬ」
C氏「なるほど、家族だったらいいかもしれませんね。まず生き残れそうだ」
A氏「あの官渡の戦のさなかにおいて、曹操のほうが勝つと読みこした眼力は、たいしたものでございますねぇ」

B氏「で、おや、つぎも魏か」

≫孔明ファンですが孔明の下は辛い気がするので、荀令君(荀いく)とか言ってみる(ちょっと似てるかと)。まぁ、最期があれですが……【-│07/05/01 23:48:03】

C氏「アレだね」
A氏「アレですね」
B氏「悲劇の軍師というイメージがひじょうに高い人物。この人も美形であったな」
A氏「やっぱり観相による人物評価が重要視された時代ですから、美形はオトクですよね。わたしもロバじゃなく生まれたかった……」
C氏「ロバにはロバのいいところがありますよ。ええと、なごむ、とか?」
A氏「そんな特長、うれしくありません! よそさまがなごんでも、わたしは傷ついています! 
いつもいつも人に会うたびに『弟さんとはだいぶちがいますね』といわれて比較される、このつらさ! 
引きこもることさえ可能だった弟とはちがって、家の存続を最優先に考えなくてはいけない長男の苦労など、あなた方にはわかりゃしないんだー!」
C氏「す、すみません。ココロの地雷を踏んでしまったようです。どうしましょう」
B氏「どうもこうも、しばらく泣かせておくのが、思いやりというものだ。
ほれ、泣きつかれたら、鎌倉名物『はとサブレ』を食せ。おいしいホットミルクつき」
A氏「ありがとうございます。なぜここで、鎌倉名物が出てくるのかが、よくわかりませんが、いただきます」
C氏「黄色い缶で買うと、『はとサブレものがたり』という冊子がついてくるのですよね。
はとサブレ誕生秘話。あのちょっぴり民話ふうのサクセスストーリーは好きだったりします」
A氏「これ読んでなごんでいますので、しばらくお二人でどうぞ」
C氏「ではさっそく。ところで空箱事件。Bさんは、真相をご存知ですか」
B氏「真相というか、なんというか。あの事件が発覚する直前、たまたま見かけたのだが、曹公がまんじゅう片手に『あっ、いっけねぇ、入れ忘れた!』と、額をぴしゃりとやっていた」
C氏「それって……」
B氏「うむ、その直後であったのう。荀ケどのが自害なさったという報せが飛び込んできたのは」
C氏「うはあ……」
B氏「あの方は謙虚なお人柄で、うちよりは格は下がるが、さすが名家の出というか、ガツガツしたところがまるでなくて、立ち居振る舞いも優雅、知性や人品においても申し分なく、なるほど、曹公がぜひに三公にと推す理由がわかるお方であったぞ。ただ」
C氏「ただ?」
B氏「なるほど、たしかにここまでは諸葛亮に似ているかもしれぬが、思想的には逆だな。
諸葛亮はかぎりなく曹公に近かったであろう。曹公も、漢王朝の擁護をたしかに標榜はしていたが、その実、その再建はもはや無理であろうと踏んでおった。
簒奪というと言葉が強すぎるが、自分以外に、この国を統一できる者はいなかろうという自負は相当なものであったぞ。
それがまー、自分とおなじような考えを持っているやつに邪魔されるのだから、人生はわからん」
C氏「たしかに、曹丕が即位したときに、献帝が殺されたというニュースが流れましたが、みんなクールだったもんなあ。
事実はともかくとして、そりゃ使えるな、ラッキー、うちの主公も即位しちゃえ、みたいな。
荀文若どのほど有名人ではありませんでしたが、うちで帝号を称すると決まったとき、反対して処刑されたお方がいるという噂が流れました。劉子初どのの主簿どのでありましたが。
別のへまをやらかして処刑されたのを、即位に抗議したからだと見られてしまったと、あとで聞きました。
あれは敵の誹謗中傷の一環だったと見ているのですが、一方で、『漢王朝が存在しているのに新たに国を作るなんて許されない』という考えを持っている人が、全国的にけっこういて、めずらしくなかった。
それを利用した謀略のひとつだった、ということなのでしょうね」
B氏「そのとおり。であるから、うがった見方をすれば、曹公の空箱事件は、『うっかり中身を入れ忘れた』などというのん気なものではなくて、そうした言論の表看板ともいうべき人物を殺すことによって、なるべくすみやかに魏の建国をのぞむ意図のこめられた、やはり謀略だったのかもしれぬ。
それを非情と批難するか、同じ立場であったら仕方なかっただろうと擁護するか、判断はむつかしいところであろうな」
C氏「空箱から離れますが、荀ケどのは、たしかにうちの丞相ほどのエキセントリックさはないし、上司にするならよいお方のように思えますね」
B氏「うむ、このなかでは、いちばんふつうに定年まで勤められそうだな」

C氏「それではつづいては、ようやく蜀のお三方。まずは昭烈帝こと劉玄徳さまより!」

≫好きなのは孔明ですが、劉備なら褒めて伸ばしてくれそうかなと……うぅん、どうでしょう。とくさ様のご意見に同調したい気もします(笑)【-│07/04/26 21:27:23】※とくささまのご意見は、あとで孔明のところにて発表されます(^^ゞ

B氏「苦労はする。まちがいなくする。下手すりゃ全財産なくすかも。それでも仕え甲斐がいちばんありそうなのが劉備かな」
C氏「えー。そう思うなら、うちに来てくださればよかったのに」
B氏「陳羣から、
『あそこは悪くないけど、ちょっと劉備が優柔不断で、マジいらいらすっから、ストレスたまって大変だよ。仕官するなら相当な覚悟が必要かなー』
と聞いていたのだよ。それに家柄にしたって、たしかに劉氏を名乗ってはいるが、実際は、高祖とはめちゃくちゃ遠いだろう。そこも気になったのだ」
C氏「あ、じゃあ、選択肢のひとつとして、考えたことはあったのですね」
B氏「まあ、一気にトップになれるかなと。諸葛亮なんぞは、うまくやったほうであろうな」
A氏「そんなたやすいものではありませんよ。たしかにすぐに軍師としてちやほやされましたがね、ちやほやしてくれたのは、最初は劉備のみ、という状況だったのですから。
足元を磐石なものに固めることができたことこそ、おと……いや、諸葛亮の実力なのです」
C氏「あれっ、あんまり仲がよくないとお伺いしておりましたのに、かばったりなさるなんて、ほんとうは、仲がよかったのですね」
A氏「いえ、自分で悪口を言うのはちっともかまいませんが、人に一族の悪口を言われるのが我慢ならないだけです」
B氏「なんだか微妙な……って、あれ? はとサブレ!」
A氏「ごちそうさまでございました。おいしくいただきました」
B氏「おいしくいただきました、ではない! 24枚も入っておったのに、ぜんぶ食べてしまったのか、貴殿は! 
『あれ、ほかの二人は何も食べてないな。二人のために残しておこう』とか、ふつうは考えるだろう!」
A氏「申し訳ありません。あんまりおいしかったので、つい!」
B氏「うはあ、マイペースなやつだのう。っていうか、諸葛家がそうなの?」
A氏「あっ、諸葛って! わたしはちがいますよ! 匿名希望のAです!」
C氏「ばればれですって。しかしBさん、おなじ諸葛でも、丞相なら、うっかり食べてしまったら、代わりのお菓子を用意しますよ。
ところで、いろいろと諸葛姓の人物に関するものを読んでみましたが、やはり丞相は、突然変異じゃないかしら、というくらいに突出していますね」
B氏「あれは人類の突然変異ぞ。カズコ(※地獄に落ちるわよ! のお方)までが誉めるだけあるわい」
A氏「なんだか肩身が狭くなってきました…」
B氏「ふん、わたしは金持ちゆえ、はとサブレに関しては許してやろうではないか。
貴殿の一族とは、子孫同士が姻戚になるわけであるし、揉め事は避けておきたいからのう」
C氏「え! そうなのですか!」
B氏「諸葛亮サイドから見れば遠いつながりかもしれぬが、諸葛亮の従弟の諸葛誕の娘が、琅邪王となったうちの四男の嫁なのだよねー」
C氏「ええ! そうだったのか! というか、いま思いっきり自分で身分をばらしましたが、よろしいのですか、ぐるぐる首がまわる人!」
B氏「うん、隠すの、飽きた」
C氏「飽きるの早いな。ボケたふりは十年つづいたのに…」
B氏「蜀が滅亡したあと、益州に移住していた、主だった荊州人士の子孫たちは、強制的にまたもといた土地に戻されておる。
諸葛家の場合は、祖先の墓が、琅邪にあるということで、琅邪に移住させられたのだな。
やはり故地ということもあり、三国時代にばらばらになっていた諸葛一族は、晋の時代になって、琅邪に戻ってきた節がある。
三国にそれぞれ散らばっていたものたちが、安心して琅邪に戻ってこられたのも、やはりうちの子と一族の娘が、結婚していたという背景があったからだと推理するのは、そう突飛ではなかろうよ」
C氏「なるほど、たしかに」
B氏「そも、ふしぎに思わぬか、諸葛孔明は魏の路線をそのまま引き継いだ晋にとっては、やはり敵国の宰相。高祖たるわたしのライバルぞ。
それなのに、早い段階から孫(炎)が大絶賛をしているし、諸葛の一族の子孫や一族が、おなじく早い時期に順調に出世しておる」
C氏「言われてみればそうですね」
B氏「諸葛亮の人気が死後も落ちるどころか、蜀のなかで廟が建って、神格化してむしろ上がっていたこともおおいにあるし、本人の人生が、人に感銘を与えるものであったことも大きいのだが、やはり一族がうちの子と結婚していた、というのも大きいのだよ。
なーんだ、むかしは敵だったけど、いまは一族じゃん? 評価しとく? みたいな感じ?」
C氏「最後が急に軽くなった。いかがです、呉のお方。なんだかさっきから静かですが…」
A氏「わたしには、関係のない、話です……」
C氏「え、なぜでございますか。ご一族のお話でしょう」
A氏「あくまで従弟と弟たちのお話でしょう。わたしの一族は……三族皆殺しになりましたので……」
B氏「…………」
C氏「…………」
A氏「ううっ」
B氏「すみません」
C氏「ごめんなさい」

B氏「な、なんだ、このじめじめ感。うつになりそう。おい、そこの酒好き男、この場を盛り上げよ」
C氏「はいはい、それではつぎ、趙将軍。いただいたコメントはこちら」

≫趙雲課長。職場の雰囲気もイイ感じっぽい気がする・・・定年まで頑張れそうっす【うみ│07/03/16 0:08:02】

C氏「課長なんだ…!」
B氏「いや、課長っぽいな。係長ではなく、部長でもない。ましてや常務などでもないという」
C氏「実際、趙将軍の部隊は、かなりきわどい作戦を請け負っても、生存率は高いという、プロフェッショナルな部隊だったようですよ」
B氏「さもありなん。趙子龍自身が功名を求めず派手な勲功もほしがらない、職人的な武将であったから、当然、その部下も職人的な者たちがあつまったのであろう。
徹底した現場主義のもと、部下は、自分たちを理解してくれるという安心感を抱いたであろうし、趙子龍も、この者たちならば大丈夫であろうと、よい意味で放任する。
だれもがおのれの力を百パーセント発揮できる、よい職場だったのではないかな」
C氏「うわあ、そうだったのか。具体的に聞くと、すっごくいい職場だな。そこで働きてえー! 
というか、目のまえにあったのに、地味すぎて、そこがパラダイスということに気づかなかった…! 不覚!」
B氏「やっぱり同じタイプだった、徐将軍や張文遠の部隊なども、そんな雰囲気であったから、なんとなく想像がつくのだ。
なにより危険な将軍職で、何度も殿(しんがり)を勤めながら生き残ったわけであるから、自身も戦略というものを頭に抱いていたのだろうな。だからこそ、いかなる局面にも対処できたのであろう。
そして趙子龍と、その部下たちにとって幸いであったことに、その戦略の展望は、かぎりなく諸葛亮のものと一致するものだったにちがいない」
C氏「戦略といえば、魏将軍も抱いていたようですが、丞相と意見があわなくて、ケンカばっかりしておりました。仲裁するほうは、もう大変」
B氏「そこからが才覚云々ではなく、人間関係の話になるのだな。
ま、誤解をおそれず簡単に言ってしまうと、諸葛亮は趙子龍と気が合ったが、魏文長とは合わなかった、ということなのであろう。
その合わない部分を、どう折り合いをつけていくのかが手腕だったり、個人の度量だったりするのだが、諸葛亮は、ちょっぴりそういうのは、ニガテであったようだのう」
C氏「まー、あえて反論しませんよ。たしかにそうかもしれない。
なんだかんだと趙将軍がお亡くなりになってからだものなあ、蜀の軍部が割れたのって」
A氏「お会いしたことがありますが、謙虚な方でしたね。たしかに風采も立派でしたが、しかし残念ながら華がなかったような」
B氏「職人に華はいらぬ、ということかもな」
C氏「なるほど。コメントをもうひとつ」

≫縁の下の力持ちになれる人がいいですね。そして周りから信頼される人。なので趙雲にw孔明の下は過労死しそうで怖いし(笑)【希楼│07/02/05 1:04:46】

C氏「事実、なんどもお花畑を見そうになりました」
B氏「休みをとらせてもらえなかったのか」
C氏「ちがいますよ。丞相が休まれないので、ほかのものが遠慮をして休めなくなってしまうのです。
そうなるともう、職場全体が、不眠不休があたりまえの状態。古代において24時間体制ですよ。
いま思うに、さきがけだったんだなあ」
B氏「そんなさきがけはいやだ」
A氏「やはり信頼できるか否か、でしょうな。
伸るか反るかで、どかーんといい夢を見たいときは、劉備や曹操、司馬仲達、安定路線ならば趙雲、周瑜、荀ケというところでしょうか」
C氏「しかし十年の潜伏期間ののちに、期をみはからってクーデターとは、あなたってまるで、なんかのウィルスみたいですね」
B氏「やかましい。勝ってナンボであるぞ」
C氏「そりゃそうか。では、さて」
A氏「さて」
B氏「うむ、最後の発表になるわけだが、諸君、気づいたか。いままでのコメントの特長に」
C氏「あっ、気づかないフリをして、スルーして終わらせようと思っていたのに!」
A氏「お二人では申し上げにくいでしょうから、わたしが。

好きなのは孔明ですが……
孔明ファンですが孔明の下は辛い気がするので……
孔明の下は過労死しそうで怖いし……

こんなことばが多く寄せられたMY弟弟」
B氏「そしてその集大成ともいうべき貴重なコメントがこちら!」

≫誰を上司にしても胃が荒れそう・・・なので、どうせ苦労するなら尊敬する孔明殿に!【とくさ│07/02/12 19:52:14】

C氏「おもいきり妥協したっぽい(笑)! これぞ丞相にふさわしきコメント!」
B氏「いいのう。こうでなくてはいかん。なんというかもう、回答者のみなさんの『この中にはいないよ』という声が聞こえてきそうなコメントだ!」
A氏「みんな、普通が一番だと思ってらっしゃるのですね」
B氏「そりゃそうだ。英雄の下で働くというのは、かなりの覚悟を必要とするからのう」
C氏「美しくまとまりましたね。ふつうがいちばん、というわけですか」
B氏「うん、ふつうがいいよ、ふつうがね」
A氏「あれ、対談の主旨は、そういう内容だったでしょうか」
C氏「細かいことはお気になさらず! さあ、こんな覆面とって、みなさんでこれから居酒屋にでもくりだしませんか! 奢りますぞ!」
B氏「ヤダ」
A氏「終電が近いので、ここで失礼させていただきます」
C氏「………そうですか、お気をつけて………」


おまけ

文偉「うー、ひとりで飲んでも盛り上がらないなー。だれかいないかなー」
X氏「えっ? 会計が5万円? 冗談だろう、水割りにピーナッツしか飲んでないっての! あっ、もしかしてぼったくり?」
文偉「なんだなんだ、うっかりしたやつがいたものだな。
おい、話は聞いたぞ。そこな酔客の言い分が正しければ、水割りにピーナッツで5万は高すぎる。
そう、よしよし、明朗会計、これがいちばんだ。災難でしたな、大丈夫ですかな……って」
X氏「ああっ!」
文偉「おまえは!」
X氏「蜀ののんだくれ!」
文偉「丞相のイヤミな甥っ子! ここで会ったが百年目! 
おい、ぼったくりバー! こいつは金をたんまり持っておるぞ。もっとぼったくれ!」
諸葛恪「なにを言い出すか! というか、おまえがこんなところでウロウロしているということは、もう対談は終わったということだな。父上は何処におわす?」
文偉「なーにがいずこに、ぞ。とっくの昔に終電で帰ったぞ。ち
なみに司馬仲達は、待たせていたハイヤーで帰った。金持ちっていいな」
諸葛恪「しまったすれ違いか」
文偉「は? なんだ、おまえ父君を迎えにきていたのか。
って、こんなところで飲んだくれていて、迎えもなにもなかろう。あいかわらず、いい加減なやつだなー」
諸葛恪「だまれ、わたしは呉の大将軍だぞ!」
文偉「わたしも大将軍だ」
諸葛恪「………えーーーっと、ともかくだ! おまえなんぞに用はない。いますぐ父上を追わねば」
文偉「とっくの昔に家に着いていると思う」
諸葛恪「やかましい! 名門の子弟だかなんだか知らぬが威張るな!」
文偉「威張ってないって。なんかおまえ、初対面からわたしを威張っていると決め付けておるな。
丞相がわたしの履歴書を先にそっちに送っていたと聞いたが、なんて書いてあったのだろう」
諸葛恪「ふん、おまえの知ったことじゃない。やだやだ、苦労知らずのエリートの癖に、苦労人装うところがイヤミなのだよ」
文偉「なにやら誤解があるような。苦労したのはほんとうだぞ。なにせそちらの使者に抜擢されるまでは、黄門侍郎という、悪くはないけれど、要職というほどでもない地位だったのだ。
それが一転したのが、丞相が南蛮から帰られてパレードをしていたときであった。出迎えにやってきたわたしに、丞相はこうおっしゃられたのだよ。
『ヘーイ、そこのカレシ、乗ってかない?』
そう言われては乗らざるをえまい。車の横に座ったわたしに、丞相はいつになく満面の笑みをたたえて言った。
『呉の使者に行ってきてくれ。旅費はちゃんと出すから』
あたりまえだ! 自腹で使者に立つ者がどこにいる! と、言いたいのをぐっと飲み込んで周囲を見れば、なにやら要人たちが、みな、わたしを憐れみの目で見つめているのだ。
どうやら丞相は、
『この車の助手席に、いちばんさいしょに乗ってきた、ノリのいいやつを使者にしよう』
と考えておられたらしい。
そういえば、なんだかみんなふしぎと徒歩だなあと思っていたのだよ。
そしてわたしは泣きながら、長星橋から呉へと旅立ったのだ。
どうだ、これでも苦労していないというのか?」
諸葛恪「ふん、そんなもの、苦労のうちに入るか。なんだかんだと叔父さんは、おまえを信頼していたから、使者なんてむずかしい役目を任せたのだろう。
叔父さんからの手紙では、いっつもおまえのことを誉めていたぞ」
文偉「えっ」
諸葛恪「無茶な要求やわがままを、文偉がぜんぶ呑んでくれるから、だいぶ甘えてしまっている、とね。叔父さんは、要するにおまえを鍛えただけじゃないか。そんなのは苦労なんていわない。
おまえみたいに信頼されてのびのびしていたやつなんかに、わたしのように、小さい頃から宮中の醜い権力争いを目の当たりにして、寵愛争いにしのぎをけずらなくちゃいけなかった苦労なんて、わかりやしないのさ。
何度も家に帰りたいと思ったけれど、我慢したのは父上たちの期待を背負っているとわかっていたからだ。
それなのに、父上は、わたしをだんだんと驕慢だと嫌うようになった。父上がそういうふうにしたのじゃないか。才能をひけらかす鼻持ちならないやつだというけれど、才能があると周囲に示さないと、侮られて潰される。
そういうところにいたのだ、わたしは」
文偉「………」
諸葛恪「くそっ、あのぼったくりバー、なにかろくでもないものを酒に混ぜていたな。今日は妙に舌が回る。
ともかく、おまえなんかに用はないのだ。あっちへ行け」
文偉「う、うむ」
諸葛恪「………こんなザマで帰ったら、父上は、また叱るであろうな。いや、叱らぬか……だまって何も言わずに去るだけだ」
文偉「……」

諸葛恪「……ふう」

文偉「おい、丞相の甥っ子」
諸葛恪「元遜という字があるのを忘れたか」
文偉「悪かった。どうだ、どうせもう終電もないのだし、これからわたしもハシゴをする予定なのだが、道連れがほしかった」
諸葛恪「だからなんだ」
文偉「わたしは昔から愚痴を聞くことにかけては、天才といわれている。なにせ魏文長の愚痴さえ聞き流せたのだからな」
諸葛恪「一緒に酒を飲もうというのか」
文偉「今日だけだ。どうする」
諸葛恪「……ふん、まあ、是非にと言うのなら、仕方ない。同席してやってもいい」
文偉「そうか。では、始発の時間になるまで飲むとしよう! さー、日ごろの憂さを忘れるぞー!」
諸葛恪「急になれなれしくなるな!」

そうして、繁華街のネオンのなかに、二人の酔客は消えていきました。

おしまい

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