不機嫌な幽霊

あとがき・ゼイタク者の遠吠え



『不機嫌な幽霊』の最終回を書き終わったとき、
「うわー、どーなるんだ、コレ」
というのが第一声でありました。
自分で書いてて、そりゃないだろ、とは思いましたが、いや、ほんとうにどうなるんだろう。
現時点で、まったく想像がつきません。

そして、本編MAPの作品紹介にありますが、「椒聊」とはちがう時の流れの「こうなるかもしれないパターンのひとつ」として、この作品を位置づけていただけるといいかなあと思います。
で、ここでちょっと言い訳めいた補足説明というか、いつものダラダラ話なのですが、『椒聊』などの連載群の意味をひとつ。
興味ないよん、という方は、まー、たいしたことは書いてないので、ずずいっと読み飛ばして、後半の主人公たちについてのお話に進んでいただけたらと思います(^^ゞ


はさみのが今回の連載を書きながら思ったのは、
「うーん、こりゃ孔明と趙雲の名前を、たとえば董卓と呂布(←私的に最高にやなカップリング)とかにしても話が通じちゃうような怖ろしい話になってないだろな」
ということでした。
名前を変えても話が通じてしまう、つまりは『登場人物がだれでもいい』という話になっていないか?

はさみのが『椒聊』などの長ーい連載のなかで、大量の登場人物を入れて、こまごま書いている理由は、『そこにだけしかいない、唯一無二のこのひとの話』を書きたいからです。
しっかりした『理由』を描いているか否かで、わりとありふれた言葉になってはいますが「愛している」といったセリフが、とんでもない効果を発揮するようにも思えます。
長編バンザイ、というわけではないのですけど、まあ、そういった理由から、登場人物の社会的状況などを書いて、それゆえに行動が変わったり、心を抑えたり、変えたりしなくちゃいけない苦悩なんかを書く。
ほんとうは、最後のシーンだけが書きたかったりすることもあるのですが、そのシーンを盛り上げるために、こってりと『理由』をつけまくるのですね。
それが冗漫だと思われる方も、なかにはいらっしゃるかと思います。
そこをいかにクリアしてラストまで読んでもらえるようにするかが、これからの課題ですねぇ(-_-;)

で、今回の『不機嫌な幽霊』は、あえてこうした動機を無視し、自身の作品のパロディを書くのに似た境地で、じつに軽い気持ちで書いてみました。
とはいえ、これもいままで書いてきたものの果てに存在するものですから、純粋に中編とはいえないように思います。
書くのは大変たのしい作業だったのですが、一方で、旧来の流れを変えてしまう、危険な試みだったかな、とも思っています。

このお話は、『うつせみ』が秋のお話なので、そのあとの正月から降雪の季節にかけてのお話となります。
『椒聊』が初春から新緑のころの話となっていますから、時系列的には『うつせみ』→『幽霊』→『椒聊』とすることで問題がないように思えますが、人物の心理がこれだと矛盾が起こりますので、あえて『うつせみ』のその後の、アナザーストーリーと見ていただけたらと思います。
読んでいただくとわかるとおり、かれらの関係は、ここで決着をつけておりません。
まあ、たぶん『決着する』ということはない(心理的に)とは思いますが、微妙にすれ違ったままでこのままラスト、というのも、なんだかホイサッサ。
というわけで、ご反響も多くいただいたので、調子に乗って、これをまた別のシリーズ化しようかな、などと考えているおそるべきおばかが一匹。その名ははさみの。
『椒聊』が『孤月』『飛鏡』の流れを受けて、その後、漢中争奪戦に向かうかたちになるのに対し、こちらのシリーズは、あくまで人物描写中心で、社会情勢なんかは入れないものにしようかな、とか。
軽く読んでいただける、という意味で、いままでおばか企画がありましたが、ちょっとこういう傾向のものがなかったので、2008年はこれを加えてみようかな、などと無謀にも考えています。あなおそろしや。

別にいえば、『椒聊』は、この『不機嫌な幽霊』とは、まったくちがう流れを見せます。
どうなるかは、今後のお楽しみー♪
でもって、別の流れとなりますお話のほうは、『椒聊』などで出番の多いキツネ氏、劉巴、李巌、そして休昭や文偉などが名前ばっかり出てくるだけ、となるかと思います。
あくまで孔明と趙雲の私生活だけがメインという…うーん、どうなるんでしょうね、そんな手法で先を書けるんでしょうか。

めんどうくさいことせずに、これ一本につなげれば? という声が……
それだと、いまでさえ危ういリアリティが一気に破綻すること請け合い。
『幽霊』以降の流れは、「こうだったら幸せじゃん?」という夢の世界の出来事、くらいに思っていただけたら……って、どうなるか書いてないうちから断言しちゃっていいのだろうか、ちと不安ではあります。


さて、今回のお話のことと、登場人物について。
『NHK特集 世界里山紀行』の恐るべき癒しパワーの恩恵を蒙り、できあがった、本作品。
最初は、兄弟の話で、のほほん路線にする予定でしたが、素直に考えれば、じつにフツーな感覚の持ち主である弟が趙雲のことを知ったら、とてもじゃないけれど、平静じゃいられなくなるだろう、ということで、いつものことながら、話を大幅に変更。
当初の発表時は、黒地に緑の文字、という書式でアップしたのを、翌日から、『うつせみ』と同じ色に変えたのは、書き進めていくうちに、あ、こりゃ同じ流れになる、と気づいたからです。
最終的には、第三者(この場合、弟君)に互いの関係を指摘されたあとに起こる動揺と、その後の和解を書く話となりました。
なにより、孔明は、趙雲にくらべて、持っているものが多すぎる。
先に進むために、起こるべくして起こった、バランス調整のお話でもあります。

さて補足説明をば。
趙雲があんなに最初、不貞腐れていた理由というのは、作中のセリフでぼかして言っていますが『兄と仲が悪いのに弟とも仲が悪くなったらと思うと、孔明も弟を選ぶんじゃないのか』という不安があったなかで、弟から、やいのやいのといわれて、ますます追いつめられて、被害妄想に近い気分に陥っていたからです。
だから孔明が自分の気持ちを理解してくれないことに、いつも以上に苛立って、とうとう行動に起こしてしまったのでした。
あれで孔明が『嘘だ』と指摘していなかったなら、もっとすさまじい修羅場になっていたかと思いますが、当方の孔明という人間は追いつめられれば追いつめられるほど、かえって冷静になる人なので、反撃して、お話のとおり。

このお話のなかで、いちばんそっぽを向かれるんじゃないかな、と思ったのは、趙雲が突き放されたとたんに、がらりと態度を変えて、すがりつくシーン。
我にかえったなら、こうするだろうな、と思って書いたものでしたが、
「情けなさすぎる。引いた」
あるいは孔明の態度について
「ちょっと冷たすぎ」
となるかなあ、とドキドキしていました。

孔明はなかなか短気なので、趙雲の前では怒りを爆発させたものの、あとになって『どうしよう!』となりまして、で、弟との対決になります。
弟と決別することを決めた後の最終回。
突然、孔明の一人称となったので、「おんや? 一話分、読み飛ばした?」と思われた方もいたかもしれない。
孔明が趙雲のもとへ戻ろうとする心理を説明するためのエピソードも考えていましたが、野暮になるなと思いまして、全面カットしました。
最初は三人称で書いていた最終回ですが、しっくりこなかったので、孔明目線の一人称に書き換えた、といういきさつもあります。
と同時に、エピソードも変えてあります。
孔明がやってきて、趙雲に自分のほうから、という流れは同じなのですが、どちらがどちらを抱きしめるか、という、そこを変えてみました。
一人称にして、孔明のほうが、趙雲を抱きとめる、というふうに変えて、はじめて「あ、これだ」と思えた次第です。
当方の孔明は、とことん仕切り屋なものでして、与えられる一方、というのは嫌だろうな、という、これで怒ったことと合わせて、整合性が出たかな、と。
一人称にしたので、そのあたり説明が出ませんでしたので、判りづらかったかもしれません。
そしてお気づきの方もいるかと思いますが、孔明のセリフは、『風の終わる場所』のラストの趙雲のセリフに対応しています。

さて、番外編をば。
偉度と孔明が話をしていた劉備の浮気のその実体。
英雄色を好むとやらですが、あんまりギトギトな話にしたくなかったので、はさみのの書く女の子にしちゃめずらしい、さばけた女の子の登場と相成りました。
『幽霊』が重たい話だったので、おばか企画に限りなくちかいお話にしてみました。
で、この、ミョーなお話から、ふたたび元に戻るのが『Serpent Sea』です。
なんで急に英語のサブタイトル? 
Serpent Seaは『蛇の海』、つまりは月の海の名称のひとつです。
海蛇じゃありませんよ。それじゃあUMAです。
蛇がどこに出てくるの?というわけですが、出てきません。
この番外編で、もっとも力を入れて書きたかったのが月なのです。
趙雲目線に切り替えるにあたり、当方の設定における趙雲の、どこか無機質なイメージを出すためと、どこか非現実的な雰囲気を出したかったので、あえて英語にしてみました。
孔明がなにを考えて、みずから誘惑するようなことをしたのか?
でもって、壁にもたれて眠っていた理由とは?
この二点は、あえて説明しませんでしたが、前後の流れから想像していただけたらと思います。

互いを思いやる気持ちは同じくらい強いのに、そのアプローチの仕方にズレがある。
でもだからといって、嫌いになれない、というこの関係、いったいこの先、どうなってしまうのやら。
続編が思いついたなら、また発表させていただきたいと思います。
一週間にわたってのアップとなりましたが、お付き合いくださったみなさま、どうもありがとうございましたm(__)m
それでは、またお会いしましょう(^o^)丿

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