おばか企画・ばら〜おお、純粋な矛盾よ
なんだかヘンなやつが入ってきた。
趙雲「うちは軍隊だぞ。蛇似頭事務所ではない。ちゃんと説明したのか」
陳到「説明したのですが、どうにも馬の耳に念仏、というより馬のほうがまだ利巧そうな。
しかしなんだって、うちに入隊してきたのでしょうねぇ」
ずらりと兵卒がならべられた調練場。
その人物は、ういういしさの残る少年兵と、ふてぶてしさの漂う歴戦のつわものたちのあいだで、見事に浮き上がっていた。
なにせ全身総レースの衣裳のうえに、鎖帷子に模したスパンコールのベスト、甲冑もかぶらず、髪は結わずに、ふわりと風にただよわせ、代わりに素顔はどうなのだろうというくらいにコテコテと化粧をしている。
マスカラに縁どられた目はきょろりと大きく、眉のかたちもきれいに整えられている。
美貌は美貌である。
たしかに人の目を惹かずにはおれない。
しかし、それが他者の憧憬をかきたてるものかというと、それはまた別な問題である。
陳到「やはり、人間の価値は、TPOを守れるか否かで、だいぶ変わってまいりますな」
趙雲「除隊。決まり。交通費だけ出すように事務方に伝えておけ」
陳到「そうは申しましても、主公からのご命令なのでございますよ。社会勉強のため、軍隊経験をしたいというので、どうしても入隊させてやってほしいと、ほら、このように文書まで」
趙雲「ほんとうだ……なに、『この者、来敬達(らいけいたつ※名を敏)。荊州は来家の子息にて、前州牧(劉璋)の一族につらなる者なり。よろしくてきとうにあしらって。儂は疲れた、それじゃあね』……主公……」
陳到「来家といえば、先代は司空をつとめたほどの名家でございますぞ」
趙雲「たしか、この戦乱で先代が急死したために一気に零落し、荊州から益州に疎開していたとは聞いていたが、なるほど、名家か」
趙雲は、陽光にきらきらと輝く、勘違いしたミラーボールのような少年を見る。
陳到「名家ですな」
陳到は、周囲の胡散臭げな視線をものともせず、しきりに優雅なポーズを決めている少年を見る。
趙雲「なぜであろう。俺の知っている『名家』というと、もうすこし重みがあるような気がするのだが」
陳到「それは気のせいではございますまい。しかし、ああ見えても、名家の子息でありますから、文武両道かもしれませぬぞ」
趙雲「あまり期待できぬな。あんなひらひらレースの衣裳で、蜀の桟道を超えられるものだろうか」
すると、その会話が聞こえたのか、ひらひらのレースをなびかせながら、来敬達は手を振って、バレリーノの如く、まるで雲の上を歩いているかのような足取りでやってきた。
来敏「やあやあやあ、君が常山真定の趙子龍だね。うーん、ごめんよ、常山真定なんて田舎に行ったことがないから、ちょっと君のこともわからないな。
けど、僕は田舎とか都会とか、そういうことにはこだわらないよ。仲良くしようね。さっ、仲良しの握手!」
趙雲「おまえと握手をするくらいなら、後楽園で着ぐるみと握手をする! というか、いくつだ!」
来敏「僕かい? ムッシュー、初対面でそれは不躾だな。でも、僕は心が広いから許してあげるよ。花の十七歳さ。
なぜだろうね? 十七という響きには、どこか甘く切ないものを感じるよ」
趙雲「おまえと気の合いそうなやつがいるぞ。七十になる黄漢升だ。七と十のかもしだす、わけのわからん感情について、とっくりと話し合え」
来敏「いやだなあ、僕はホームヘルパーの資格を取りにきたんじゃないんだよ。ミ・ロードはきちんと伝えてくれなかったのかな。
僕はね、埃と汗と、男のロマンを体感しに来たのさ。そう、めざすのは騎士さ」
趙雲「作品をまちがえていないか。騎士になりたいならジャンヌ・ダルクの連載のところへ行って来い」
来敏「いやだよ。中世ヨーロッパって、陰惨なイメージがあるよね。戦争中だし。耽美を追及したい僕には、似合わないな」
趙雲「三国時代も恒常的に戦争中だ!」
来敏「すくなくとも、僕は平和さ。あ、そろそろお茶の時間だ。一緒にラプ…ラプサンスーチョンを飲まないかい」
趙雲「噛んどるぞ」
来敏「お近づきのしるしにごちそうするよ。バトラー! このスッピンで図々しくも僕に勝負をいどむ常山真定の田舎将軍にお茶を持ってきて!
もちろんカップは100円ショップで買ったウェッジウッドのパチモンで十分さ。僕にはもちろんセーブルのティーセットでね。
あ、これはアンティークをオークションで競り落としたものさ。
いっておくけれど、ネットオークションなんかじゃないからね。権威あるサザビーズのオークションさ」
趙雲「知るか! 俺の調練場でお茶会をはじめるな! そこの家令の爺さん、俺の許可なく、ワゴンを調練場に運び入れるのを禁ずる!」
来敏「いやだなあ、雅心のない。家令じゃないよ、バトラーだよ」
陳到「まあまあ。喧嘩をしてもはじまりませんぞ。
いかがです、将軍。一応、やる気はあるようですし、実力を試してみるといたしましょう。
ちょうどほれ、短距離走をするところです。足の速さを見てみましょう」
陳到「体力測定終わりました。10秒3」
趙雲「足は早いな」
陳到「いいえ、五十メートル走です」
趙雲「なぜだ。俺は百メートル走で測定しろと言ったが」
陳到「百メートルの予定でしたが五十メートル付近で、貧血で倒れました」
趙雲「役に立たない……ほかはどうだ」
陳到「砲丸投げ。三十」
趙雲「メートル?」
陳到「いえ、ミリ。箸より重いものは持てないといって落としました」
趙雲「……ほかは」
陳到「80pg」
趙雲「なんだ、その値は?」
陳到「血中ダイオキシン濃度です。ちょっと高すぎ」
趙雲「どこに住んでいるのだろう……で、あいつはどうした」
陳到「ダイオキシン濃度の高さにショックを受けて、保健室で寝ています」
趙雲「叔至、俺が全面的に責任をもつゆえ、血中ダイオキシン濃度の高さを理由に入隊を断われ」
陳到「それはかまいませぬが、主公のご命令に反することになるのでは?」
趙雲「仕方あるまい。社会勉強をしたいというのなら、あいつのところに押し付けるさ」
陳到「あいつ、と申しますと」
趙雲「荊州、名家、ひ弱、ゴーイング・マイ・ウェイ。共通のキーワードを持つやつが左将軍府にいるだろう」
陳到「おりますが、タイプがちがいますよ。いいのかなあ」
趙雲「あとでフォローはする。押し付け終了。俺は調練に励む」
陳到「大丈夫かなあ、あとでケンカしないでくださいよ」
左将軍府。
孔明「というわけで、そなたに大事な任務をあたえる。なんと来家の貴公子・敬達どのの御守りだ。
それでは、よろしくてきとうにあしらって!」
休昭「どうしてわたし……というより、趙将軍が軍師にお預けになったお方でしょうに」
孔明「わたしはいろいろ忙しい。そなたは暇そうに、父親のまわりをちょろちょろしておるではないか」
休昭「それは誤解でございますよ。たまたま父上に用があるから、こちらに足を運んでいるだけでございまして。
というか、如何でございましょう。父上に頼んでは」
孔明「そなたの父は、『燭龍本紀』の再開に向けての準備でいそがしい(07/05/03現在)。ちなみにわたしも忙しい。
ここだけの話であるがな、ずっと更新停止状態だった旧バージョンでは、わたしはどうも半端な味付けであったのだが、復活バージョンでは完全な悪役になるらしい。
旧バージョンは孤月的陣と同時連載だったので、どうしてもあちらに引きずられてしまったのだな。
今回、思い切って、本編とはまったく切り離すことにした。展開がガラリと変わる予定なので、剋目されたし」
休昭「えー? まことでございますか?
って、わたしも出るのですが! 準備があります。忙しいです!」
孔明「そなたは、いつもどおりいじめられ役で、役作りの手間はまったくなかろうが。
わたしなんぞは、悪役だぞ、悪役。さー、張り切って悪役ってこう!」
休昭「言葉もヘンだがキャラもヘンになってる…ほんとうは、悪役いやなのですか」
孔明「いやっていうか、わたしはこのHPのメインではないのか。メインが悪役って、どういうHPなのだよ。ないの、愛情?」
休昭「そんなことはないでしょう。愛情がなければ、こんなにたくさんの連載を同時発進させて、ぜんぶに出番を作りませんって(ホントです)」
孔明「そうであろうか」
休昭「そうですとも」
来敏「ところで、テーマソングがほしいよね。燭龍本紀のテーマソングがあれば、もうすこし気分が盛り上がるのではないでしょうかね、徐州からの難民さん。ちなみにぼくは荊州の名家さ」
休昭「なんだかヘンな人が絡んできた」
孔明「そなたは、意地でもわたしの名前を言わないつもりだな。能力がなければ、こちらとて言葉もかけておらぬというに」
休昭「え。才能あるのですか、このひと」
孔明「友だちがいないから本ばっかり読んでいたので、書物のことにかけては右に出る者はない。
といっても、実践的な知識ではないから、おそるるに足りぬ、
っつーか、知っていることといったら書物の中のことだけなので、世間知らずにすぎるしプライドは高すぎるし、なんだか全体的にヘンだしで、職場での配置に困る人材というか。
荊州の片隅に移住させた劉璋側のごり押しもあって、今春より宮城の図書室の司書係になっておる」
来敏「テーマソングはどうだろうね、元気の出るマーチがいいよ」
休昭「マーチ……ええと、マーチと言うと、アンパンマンマーチしか知らないなあ」
来敏「それでかまわないさ。さあ、唄って! 僕のために!」
孔明「あっ、よせっ!」
休昭、アンパンマンマーチを詠唱中。
偉度「なにやら悲しげな歌声が聞こえてくると思ったら、おまえか、休昭。唄うなと言っただろう!」
休昭「えー。だってひさしぶりだったし、唄えって、このひとが」
偉度「軍師、しっかりなさい! 歌はもう止みましたぞ!」
孔明「なんだか、人生に疲れてきたな。生活だって寂しいかぎりだし」
偉度「あっ、すっかり歌にハマってる!」
孔明「だって友だちといったら、愛と勇気だけなのだぞ。あーあ、やってられない」
偉度「それだけいりゃあ、十分ではありませぬか! ゼロではないのですよ、ゼロでは!」
孔明「もう引退する」
偉度「だめ! さっ、もうお時間もありませぬ。あちらへいって、すこしお休みなさい。それから役作りに励みましょう。偉度もお手伝いいたします」
休昭「偉度は燭龍のほうが尽くしキャラなんだね」
偉度「いいから、おまえはそっちのヘンなやつの御守りをしておれ」
休昭「わたしだって、役作りとかいろいろと、そのう、あのう、ええと……ヒドイ、ほんとうに行ってしまった……」
休昭は、おそるおそる、背後でさきほどから生カルテットの演奏をバックに、パラソルのついた白いテーブルの下、お茶を飲んでいる少年をふり返った。
休昭「君はわたしの歌を聞いても平気だね。やっぱり軍師がヘンなのかな」
来敏「ちっともヘンじゃないよ。僕はね、基本的に人の話は聞かないタチなのさ。歌でもなんでもね」
休昭「また癖のあるやつが出てきたなあ……」
来敏「人間、いろいろだから面白いのだよ。さて、君があたらしい僕のガイドってわけだね。
君たち、この彼のために、なにか一曲、とびきりロマンティックなものを頼むよ。そうだな、蒼いノクターンがいいかな。
いいねぇ、いつ聞いても切ないメロディだ。失った恋の想い出が蘇るよ。
雨に濡れたパリ。忘れられない女性。そして咲き乱れる、彼女のような白い薔薇。おお、この美しくも矛盾なる謎よ」
休昭「君が謎だよ」
来敏「君、フランスはお好きかな?」
休昭「聞いてないし。フランス? ええと、好きというか、嫌いというか」
とたん、急に来敏は勢いよく席を立ち、おどろく休昭の鼻先に、その人差し指をつきつけた。
来敏「好きなんだよ! 好きでなくっちゃいけないんだ!」
休昭「そ、そうなの?」
来敏「好き?」
休昭「す、好き、かなあ?」
来敏「よし!」
大きくうなずくと、来敏はふたたび椅子に座って、テーブルの上に飾られてあった一輪の白い薔薇を手に取った。
来敏「かぐわしきシャルダン・ド・バガデル。この品種はね、雨に弱いから、湿度の高い成都では、育てるのが大変なんだ。
僕のひろーい屋敷にあるハイテクの温室だからこそ育てられる花でね」
休昭「しゃるだん・ど・ばかである? なんというか、君にぴったりな名前の花だね」
来敏「メルシー! 君とは最初から、ぴぴっと来るものがあったよ。仲良くなれそうだね、そうだろう、モナミ?
そうだ、いけないね、まだ君の名前を聞いていなかった」
休昭「なんだか個人情報をものすごく教えたくない……でも教えなくちゃ怖いな。董休昭と申します」
来敏「だめ」
休昭「え」
来敏「休昭だなんて、なんてインパクトの弱い名前なんだろう。だからいまいちメジャーになりきれないんだよ!
僕が君の名前を考えてあげる。そう、シャルル・ド・ゴール! いいね、これでいこう!」
休昭「ええ? ちっともよくないよ! そんなめちゃくちゃ有名人の名前を名乗ったら、かえって莫迦にされるよ!」
来敏「それじゃあ、なにがいいんだい、モナミ。君の知っているフランス語を並べてみたまえよ」
休昭「フランスでなくちゃいけないのかなあ。フランス語……えーーと、クロワッサン、オードブル、オールヌーボー、トリュフ、モンブラン」
来敏「料理関係ばっかりだね」
休昭「ええと、ええと、フランスパン」
来敏「それは思いっきりちがうから」
休昭「ちがうの? それじゃあ、パリ、ノートルダム、ベルサイユ、ツール・ド・フランス、ムーラン・ルージュ、ダ・ヴィンチ・コード」
来敏「ダ・ヴィンチ・コードは映画だよ。フランス語じゃないし」
休昭「えっ、またちがうの? それじゃあ、ええとええと、マリー・アントワネット、セリーヌ・ディオン、カトリーヌ・ドヌーブ、アルセーヌ・ルパン、エルキュール・ポワロ」
来敏「やだなあ。ポワロはベルギー人だよ。最初の登場にあたるクリスティ女史の『スタイルズ荘の怪事件』を読みたまえ。戦争でイギリスに疎開してきたベルギー人だと書いてある。
ちなみに当HPのずんだを読んでいる方には、古い映画だけれど、クリスティ原作の映画『オリエント急行殺人事件』がおすすめだね。
冒頭のイスタンブール駅のシーンで、推理ものでは見逃しちゃならないOPにおいて、主要人物そっちのけでケマル・アタチュルクのでっかいポートレートに目を奪われるのも、オツなものだよ」
休昭「そんなヘンなところに気をとられるのは、ここの管理人だけだよ」
来敏「いやいや、失礼、ついトリビアを。ええと、なんだったけねぇ、モナミ?
ああ、君の名前だったね。そうだ、君ってあんまり大きくないから、プチってどうだろう」
休昭「プチ……」
来敏「おやおや、不服そうだね。それじゃあ、プチはやめて、ポチってどうだい?」
休昭「ポチ! それって犬の名前だよ!」
来敏「いや、君はポチになるべきなんだよ! ポチで決まりだ。よろしく、ポチ!」
休昭「よろしくされるもんか! 名家のおぼっちゃまだかなんだか知らないが、人を莫迦にするのもいいかげんにしろ!」
来敏「いやはや、困ったね。だって僕って、名家の生まれだし」
休昭「だからなにさ! わたしの家はたしかに身分は高くないが、立派な父上がいるよ!」
来敏「わたしにだっていたさ。ちなみに位は司空。君のパパは?」
休昭「う。司空……いや、トランプじゃあるまいし、父上の位が高いから、なんだっていうんだ。位だけで人物を測られてたまるもんか」
来敏「だって、いま封建時代だし」
休昭「そういうところばっかり時代考証を気にするなよ、フランスかぶれー! そんなにフランスが好きなら、フランスに移住すればいいじゃないか!
わたしは付き合ってられない。もう帰るよ、さようなら!」
来敏「……………」
休昭「帰るよ!」
来敏「……………」
休昭「帰る、よ?」
来敏「……………」
休昭「かえ……あ、あれ?」
見れば、来敏はすっかりしょげて、沈黙したまま、はらはらと涙を流している。
その格好は、千歳烏山のパチンコ屋が雇ったチンドン屋さんなみに派手であるが、十七という年齢にしては幼い顔が、涙をながすと、いっそうおさなく、いたいたしく見えた。
休昭「ご、ごめんね。強く言いすぎたかな。というか、泣くようなキャラだと思わなかったんだ。
って、うしろの生カルテットの人たち、このタイミングで、曲を『禁じられた遊び』にするの、やめてください」
来敏「人生は涙を流した数だけの喜びが得られるもの。傷つくことを恐れていては、山を登ることはできない。
頂上に至る道はだれにでも開かれているが、その道はつねに険しく、また狭い。裾野のひろいどんな山でも、頂上に立つことのできる人間は、ごくわずかなのだ」
休昭「な、なんだろう。急に名言を言い出した! って、泣くのはやめなよ。ポチでいいからさ!」
来敏「え? ほんとうかい?」
休昭「あれ?」
来敏「いやー、急にコンタクトがずれて困ったよ。失敬、失敬、つい涙を流してしまったが、ところでなんだって、ポチでいいって?
いい選択だよ、ポチ!」
休昭「さっそく定着! さっきの名言はなんなの?」
来敏「名言? ああ、たまにね、突如として言葉が頭に浮かぶのさ。思うに、僕にはミューズがついているのだと思うよ。それもとびきり気まぐれな、ね。
これでまた名声が高まってしまう。生まれつきエリートな自分が怖くてたまらない。
この戦慄は、未来に待ち受ける栄光をまえにした、僕の武者震いなんだろうか。どう思う、モナミ?」
休昭「単に冷えてきただけだと思うよ?」
来敏「ア〜ハ? ジェラシーだね?」
休昭「ちがうよ! まったく、ただでさえ止まっている連載が急にふたつも動き出すので忙しいっていうのに、いくら軍師のご命令とはいえ、君なんかに関わっているのじゃなかった!
もう帰る! 今度こそ、さようなら!」
来敏「アデュー、モナミ。君の活躍を楽しみにしているよ。でも僕もほら、名家だから忙しいだろう。サイトを見る余裕があるか、微妙だな。そのときは許してくれたまえよ。
そうだ、お詫びのしるしに、この白い薔薇を百万本プレゼントしよう」
休昭「そんなにいらない。赤ならともかく、白ってお葬式みたいだ」
来敏「貧相な想像力だね。白薔薇は聖母マリアの象徴じゃないか。薔薇のなかの薔薇。ちなみに花言葉は『私はあなたにふさわしい』。
古代ローマ皇帝のように、君の部屋を薔薇で埋め尽くそう」
休昭「たしかそれって、あんまり薔薇で埋め尽くしすぎて、薔薇の中で窒息した家臣がいたっていう話じゃなかったっけ」
来敏「薔薇に抱かれて死す……ロマンティックだね。薔薇、ああ、純粋なる矛盾。ちなみにこれはリルケの言葉さ」
休昭「ああ、そう……もう、ほんとうに帰るからね」
後日。
趙雲「感心したぞ、休昭。あの莫迦ぼんぼん、おまえを親友だと思って、なついているようではないか。
なんだかんだと、おまえは人からなつかれるやつなのだ」
休昭「そうでしょうか……あ、これ、うちからのおみやげです」
趙雲「なんだこれは。薔薇の押し花、薔薇のドライフラワー、薔薇のジャム、薔薇のお茶……」
休昭「ほんとうに百万本の薔薇が降ってきました。薔薇の香りで死にそうです」
来敏「え、死にそうなのかい? 気の毒に、モナミ。それじゃあ、君の代わりを僕がしようかな」
休昭「あっ、いつのまに! というか、もしや、最初からそのつもりで!」
来敏「だって、やっぱりポチな君より、華のある僕のほうが、作品が輝くと思うんだよね。
頂上に立つためならば努力を惜しまない。そういう、名家なのに、謙虚なのが僕なのさ」
休昭「どこらへんがどう謙虚だ! だめ! そこは絶対に譲れない! というか、出てけー!」
趙雲「強くなったな、休昭……(遠い目)」
というわけで、長らくお待たせしておりました『燭龍本紀』と『椒聊よ、遠き条よ』を、近々再開いたします。
旧作がお好きな方にも納得していただける形になるよう、努力しておりますので、どうぞご確認いただけたらと思います(^^♪