わたしの作品(製作途中ですが……)

2008年9月29日更新

千鳥響(チドリキョウ)というのは、ペンネームです。
  「将来、もしも子供を産んだら付けたい」と思っていた名前。それを2つ並べただけです。囀るイメージで、とても気に入っているのです。なので、どちらが苗字のつもりもありませんが、当然、前が苗字に見えてしまいますね。

*グーグル検索して導かれるものの中に随分と愉快なものがあるようですが、わたしとは一切関係ありませんので(ーー;)
それから、よく言われるのでが、お笑い芸人「千鳥」のファンでもございません。(嫌いじゃないけど)

そして、その千鳥響の比較的短く読みやすい作品を選んで、いくつか紹介してみようと思います。
  これをきっかけに、道が拓けることもあるかもしれないので・・・・・・
  だけど、このカタチで、うまい具合にお届けできるのかどうか、”今は”とても不安です。

ともあれ、読んでくださった方に、 もしも楽しんでいただけたら、とても幸せなことです。

千鳥 響

 

公開する作品を検討しています。
  そのPDFが準備できしだい、公開の予定です。

〜今、しばらく≪準備中≫です〜
公開しました際には、よろしくお願いします♪

ちなみに、わたしの趣味「椎茸物語」の中に、5分足らずで読める同名タイトルのショートストーリーがあります。右に公開中の”paesonifyシリーズ”実験作ですが、 わたしの筆力がどの程度かくらいは、はかれるかとは思います。
  PDFではなくベタ打ちですが・・・ →こちら

 

** Kyon.C’s ”ショートショート”♪ **

(parsonifyシリーズ)

とりあえず1年ほど、月1作ずつ
3分で読みきれる作品を”Webオリジナル”で書こうと思います。

第1作*「雲の色彩」(2008年5月up){読む}

第2作*「煽動的靴音」(2008年6月up){読む}

第3作*「猫らしい彼女」(2008年7月up){読む}

第4作*「ほしぞらウィンミル」(2008年8月up){読む}

第5作*「アレクサンドリアの香り」(2008年9月up){読む}

 

< 雲 の 色 彩 >

千 鳥 響 (Op.25)

彼女に影がないのは、ボクの仕業だった。
 黄色いヤツは、ボクを痛く、まるで刺すように攻めてくるけれど、そんな痛みには変えられない感情が、ボクの体をぷかぷかと浮かべていた。
 いつも、いつも。きっといつも、だっていつも、まさか……って、そろそろ気づかれるかもしれないと少しだけ怯えながら、大きな期待をしていたけれど、有り得ないことだった。ボクの心が、ボクに心があることが、彼女の世界には有り得ないものだからだ。

 わかっていた。ボクは生まれ、浮かび、漂い、やがて、消えなければならなかった。

 彼女を初めて見たとき、ボクは雨を降らせた。なぜかってそれは、彼女が、泣きたいのに泣けないでいたからだ。ボクは突然の雨に走り出す彼女を、いつか見たことがあった。だけど、その日、彼女は走り出さずに立ち尽くし、顔を被った。ボクは彼女を楽にしてやった。
  そんな気がして、気が気でなくなった。
  そんな彼女は今日、憂鬱そうにボクの下を歩いている。
  ボクは緩やかに追う。とても遠くて、とても清々しい白色で、怪しまれることもなく、彼女の背を、長い髪を追う。
 「また、泣きたいのか?」そんなことを聞きたくても、ボクには聞けない。
  違う。違うんだな。違うのか。
 「また、泣きたいのか?」
  違う。違うとわかる。だけど、そう聞きたい。
  ボクも憂鬱になる。
  ボクは憂鬱になると、ねずみ色になる。わかりやすい性分なんだ。でも、彼女に性分など気づかれはしない。不意に彼女は、ボクを見上げた。
 「どうした?」
  ボクの憂鬱に、ため息をひとつ。それは透明で、なのに、なんだかボクに似ていて、ふわりふわりと浮かんでくる。
 「ボクに触れるな」彼女の息を、ボクは拒んだ。
  吸い込んで潰したい、あるいは、包み込んで馴染みたい、また、抱き締めて消してしまいたいと、風に伝えた。だから、風が、それをそうした。風の仕業だ。
  彼女は、こんなボクを拒みさえもしない。拒んでさえくれない。
  思い返せば、あの日、彼女は確か、彼ら、といた。彼らの中には、彼女にとって特別な、彼、もいて、彼らの中には、彼女にとって切実な、別の彼女、もいた。詳細な事情はわかるよしもなく、ボクに想像できたのは、彼女が彼を想って泣いたことだった。
  でも、それは、違うのかもしれなかった。
  彼女の行く先に、彼が立っているのが、今、見えているからだ。彼女の影を奪う黒い影が、もうすぐ彼に届く。それは、ボクが彼を包むことだった。
 「ごめんね。あたし、雨女だから」か細い声は、風が運んできてくれる。
 「関係ないよ。あっちは晴れてるし、大丈夫さ」憂う彼女を、身振り手振り慰める彼。
 「でも、こんなに分厚い雲がずっとついてくるみたい。ほんとに、ごめんね……」
 「雨?」そう、狼狽えたのはボクだ。
  いくら体がねずみ色でも、そんなつもりはなかったんだ。
  ボクはしかし、無意識に、雨を降らせかねない状態であることに気づかされた。
  そんなに苦しいのか。
  今、ボクは、そんなにも苦しいか。
  急激に、背中を刺す熱が全身に伝わってきた。僅かに体をくねらせ、振り返る。爽やかな初夏の風が通り縋る。黄色いヤツが、やけに眩しくボクを照らしていた。消してやろうか、溶かしてやろうか、そんな優しい温度でボクの体を撫で回していた。
  もう、痛みは感じなかった。
  わからないこともわからなくていいこともあり、知りたくても知らないほうがいいこともあり、守りたくても守れないものもある。
  世界が違った。
  世界が違いすぎた。

「生まれ変わったら何になりたい?」よく彼らは、そんな他愛ない空想を口にする。
 「くも」そんなことを言った少女も、いつかいた。
 「くも? あの、お空の雲? どうして?」少女のママは問い返す。
 「ぷかぷか浮かんで、気持ちよさそうだから」
  ボクはもしも、新しい姿で生きられるならば、人間になってみたいと思っていた。今は、そうだな……彼、になってみたい。

 彼女たちは歩き出した。ボクは緩やかに追う。
  だけど、微かに彼女に影ができている。
  ボクは体を内へ折り曲げる。
  「あぁ」ボクの腹が裂けていた。限界かもしれなかった。
  「ちょっと、陽が射し始めたね」彼が彼女に微笑みかける。
  「ほんと。よかったぁ」ほっとした様子の彼女の吐息を、ボクは吸い込むことにした。黄色いヤツを振り返る。頷くように光が折れる。
  いいだろう。消えてやろう。
  いいだろう。消えてしまおう。
  彼女の今日の楽しみと幸せのために、ボクはここで消えていい。ここで消えるのがいい。きっと必ず、彼女が笑いますように。
  「ほら、晴れてきた。あんなに分厚かった雲が、散らばってる」ぼんやりと彼の声が聞こえてくる。ボクを見上げる彼女の微笑みも、なんだか淡い。
  「斑な雲も綺麗よね。わたし、実は雨も嫌いじゃないし、雲はね、大好きなのよ」
  「大好き? どうして?」
  「ぷかぷか浮かんで、気持ちよさそうだから」

<了>

 

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