ざくろ石を食べる。2

        アダム「リリト、この子にも見せてやってくれないか」
        リリト 「・・・いらっしゃい。」
        
        赤児はアダムの手を離し、リリトのもとへ行く。

        アダム「お前が、決めるんだ」

        その言葉に呼ばれたように男が入ってくる。

        ☆以下、設定に従ってエチュードでセリフ決めます。
    −−−−−−
        男は女1・女2の両方と付き合っている。
        男は真剣にふたりの女を愛しているし、女も男を愛している。
        自分の方に100%向けさせようと女は手練手管。
        どどーの勢いで嘘や不満や真実が語られる、“愛”という名のもとに・・。
        なぜなら、女1・女2は共に男の子供を宿しているから。
        どちらかの愛を選ぶことは、他方の子供を殺すこと。
        “優しい”男には、捨てることも殺すこともできない。
        法律や道徳を越え、男は両方と結婚することを誓う。
        彼にとって最も幸福なやり方だ。

        女は相手の産む子供を愛することはできないという。
        男は嘘がつけない性格なので「1とセックスしている時は2を思い浮かべ、
        2とセックスする時は1を思っていた。
        だから、お互いの子供の魂の母は入れ替わっている。
        ふたりの子供は本当の兄弟♪大切なのは心だ。」などという。
        「だって燃えるんだもん」・・とかもいいつつ、
        “生命を守る”という正義のもとに愛を誇示し、新興宗教の教祖よろしく
        女1、女2を感動させ、子供も含めて、5人仲良く愛のファミリーを作ることになる。

    ーーーーーー
        
        会話の途中、赤児は舞台に向かい、赤い食べ物を食べる。
        赤児は迷っている魂。ひとりぶんの魂。

        赤児「お母さんを食べる。お母さんを食べる。
            私は命に近づく。お母さんは死に近づく・・。」

        アダムが《魂の測量計》を手に登場する。

        アダム「いきたいかね?」
        赤児 「はい。」
        アダム「どっちに行くのかね?」
        赤児 「両方に。」
        アダム「(計って)・・ずいぶん、薄くなるが・・。」
        赤児 「生きたいんです。」

        赤い布が観客の上に落とされる!
        布は半分に引き裂かれ、女1、女2の股の間を通して男を囲っていく。
        男は必死で引っ張る。
        観客の頭の上をズルズルと赤い布が進む。
        血が流れ、風が流れる。
        男も女も赤い塊に埋もれてしまう。

        アダム「その瞬間、魂を選んでいることを人は忘れている。
             互いを求め、未来を求め、神の領域の入り口に立つ時の
             純粋な想いの濃さが魂を決めるのだ。
             私はとても素直だ。欲しいものには大きいものを、
             いらぬものには小さいものを、求められるままに差し出している。
             すべての生き物に、平等に・・。」
        赤児 「私は、誰に、授けられたのですか?」
        アダム「・・誰に、か。ヒトとはそういうものだな。
             お前はずっと探すことになるだろう。
             通い合わないひとりとひとりが盲目の案山子みたいに突っ立ていたよ。
             何を求めているのかもはっきりしなくてね。
             また3ヶ月くらいで返されてしまうんじゃないかとも思ったが・・。
             私もこれで結構傷つくんだ。・・時間は関係ないんだがね・・。」
        赤児 「私は何を探すんですか?」
        アダム「自分を、だよ。はじまりからして曖昧だ。
             しかも魂としては片親みたいなもんだからね。
             少し、足りない。だから、気にかかる。一生・・また帰ってくるまで、ずっと・・
             お前は自分が誰なのか、何なのか、さがし続けるだろう。」
        赤児 「私は、欠けているんですか?」
        アダム「・・いや。人間らしいということさ。
             さ、行っておいで。お前らしく、生きるんだ。」

        赤の中に赤児は混じってゆく。
        苦しみながら、男や女たちと絡み合い、手を握る。

        アダム「ここ一万年ほど、人間はは皆そうだ。
             すべて純粋で満たされた魂を渡したことなど・・久しくないな。
             欠けた魂を持って生まれたものは、欠けた所にこだわる。考える。
             自分は、自分は、・・ヒトは考えることに夢中になった。
             そして、考える所が(脳を指して)大きくなっていった。
             生きることを全うしてくれれば、それで充分なんだがな。
             魂をなぐさめるためにひとりを追い、ひとりになり、ひとりをなぐさめるために
             欲を満たし、幸福になるのなら・・・。
             ・・私にはどっちでもいいことだ。」

        リリト 「(脳を指さして)あなたも同じ形だわ。」
        アダム「・・ひとりぼっちだからさ。」
        リリト 「(笑う)」

        アダム消えてゆく。
        アダムとリリトの神話が語られる。