2002.7.1〜7.31
7月1日・ 達人、値千金。
昭和シェル石油のVPの録音。
事務所からの連絡は「アドリブだけ、セリフないからね。・・指名の仕事だから」
FAXで貰った絵コンテは4枚。短いアニメ。ショウくんてキャラクターだ。
ラクでいい、なーんて思わない。あたしに指名が来たってことは、バリューで決めたに
違いないもん。名前知ってる声優でないと安心しない・・ってことだろう。
注文の多いクライアントと見ていい。時間かからないといいけど・・。

ナレーターはキートン山田さん。ちびまる子ちゃんのナレーションで有名な方。
現場で新たに貰ったコンテにはセリフが3つありました。ふ〜ん、喋っていいんだ。
「先にショウくん録ります。適当にリアクション入れてやってみてください」
ナレーションが被りそうな部分は言葉にせず「おお〜」なんて音にし、タイムが
余りそうな部分はセリフ作って、ディレクターの反応をみてみる。
こういう仕事ってさ、最初のテストで見切られちゃいがち。真剣かつ余裕が大事。
「バッチリです。このへんもセリフにして・・。Nと被っていいですよ」
2回目のをキープして、3回目に本番。で、その後またセリフが増えました。

嬉しいんだけど、いいのかなぁ・・。と思ってたら、やっぱりです。
キートンさんがブースに入って喋り始めると「早口すぎるなぁ」の声。
あたしがいっぱい入れてるから、その分ナレーションがはみだしちゃうんだ。
しかも、被って来ると思ってたとこ、しっかり生かしてくれてる。
「もう一回テストでお願いします」と、キートンさん、全然早口じゃない。
尺(長さ)もコメントも変わってないのに・・なぜ、入るの〜?
それがベテランのワザなのでした!言葉の隙間消したり、軽く流す強弱つけて
みごとに自然で面白い、あのキートン節にしてしまう!うわ〜、すげ〜。

ナレーションのコメントは会議しつつ二転三転、細かく直しがはいります。
でも、毎回一発でキチッとハメてくる!さすがだわ〜。勉強になるわ〜。
なんだかワクワクしてしまいました。プロのお仕事、とくと拝見!
「ありがとうございました」次の仕事にタクシーで向かうキートンさんに本気で
頭下げてました。いや、もう、尊敬ですよ〜。すごいなぁ、プロって!

7月5日・ 年に一度の数え唄。
オメデトウオメデトウ。43歳になりました。

成長期の中学生に負けないスピードで衰えゆくアタシの体。
土に還ろうとする肉か?下へ下へと向かうのは・・。
スロウに怠惰して、味わいつくし、融けて混ざろう。

誕生への夢もロスタイム、一発逆転狙って対外試合申込む勇気はなく、
身から出る錆びた血の疼きに耐えられず、自ら笛ふく最後の審判。
お誕生日にはね、甘いお菓子を食べるんですよ。

何も残さずに逝こう。忘れ去られる頃に終っていよう。
消化される悦楽。指はまだ震えるのに・・・。

7月7日・ 猫、笑う。
ニーニーと鳴く声が庭でする。
手のひらサイズの白い子猫、発見!ほんの少しのオレンジのブチが可愛い。
母猫が「フーッ!」と威嚇しながら近寄って来た。
「飯おくれよ〜!フーッ!」・・可愛くな〜い。(笑)
でも、パッ缶してあげる。母猫が食べる。自分だけ。
おお〜い、母〜。間違ってないかぁ〜?

すっかり食べ終わると「フーッ!子供もいるのよ〜!もう1缶ちょうだいよ〜!」
ちー、弱味を握って駆け引きたぁ、やるじゃね〜か母。
仕方ない・・パッ缶。
がぁ〜〜〜!またまた母だけ喰いやがる〜!

しばらくして見ると、母猫は車の下で子猫におっぱいあげていた。
優しい顔して。満足そうに。
あ、ひょっとして住むつもりですか?ここンちに・・?
「いいメシ使いが見つかったのよ」母猫の笑顔が語っていた・・。

7月8日・ 吸血決死隊!
W杯月間が過ぎ、フットサルも再開です。
それぞれ友達を呼んだり、公演の終わったわっしーや森山くんも来て20人。
2チームに分かれて、W杯お土産争奪戦!清水キャプテン張り切ってる〜!

もうすっかり夏。日本の夏・・といえば、蚊!
川に近いせいか、このグラウンドには蚊がウジャウジャいるんだ〜。
いやもう、ハンパじゃない数!サッと片手をふれば手の中にいるくらい。
暗くなり照明が入ると、バチバチバチ〜!!とすごい音!線香花火みたいな破裂。
照明灯型の虫取りで蚊が次々爆死していくんです。1秒5匹ってとこかな?
それはもう壮絶な、飛んで灯に入る夏の虫たち!
練習が終わる頃にはほぼ全滅。おそろしい兵器じゃありませんか。

明るいところ目掛けて飛んでしまう習性、本能には逆らえないんだな〜。
毎日毎日、仲間が死んでも本能って変わらないのかしらね?
いや、それにも増して、毎日これだけ死んでも、数が減らないのがスゴイ!
子供が餌になりやすい海の生物はそのぶん多く産むという。
この辺りの蚊も、人間への対抗手段として大量出産で適応してるのか〜?

ある日、遺伝子が変異して、電気ショックに強い蚊に進化するかもしれない。
少なくとも、虫除け薬はちっとも効き目がありませーん。
生き残るために強くなる。抑圧と困難こそが進化の鍵・・。
ああ、優しくするから弱いままでいてね。
足首まわりだけで10数箇所。夏の戦いの記録は赤い!(笑)

7月10日・ 自分から行ける女。
台風だっちゅうのに、エステに出掛けた。
「みなさんキャンセルされちゃってヒマなの、ゆっくりサービスしますね〜」
スーパーの雨の日割引みたいだのぉ・・。お得。

最近なんだか、ゆる〜くゆる〜く生きてる。
キチンとさんになろうとしても午前中しかエネルギーが持たない。
W杯燃え尽き症候群なヒトもいるようだけど、尽きる程は燃えちゃいない。
虚弱体質に湿度大敵ってことスか?冬眠ならぬ梅雨眠とかいって惰眠貪る毎日。
お中元にビール詰め合わせ戴いたのが、また拍車をかけておりますな。
ほ〜ら、冷蔵庫に銀の缶が行列で出番を待ってる・・。
お出掛けして、お風呂浴びて、ビールしたら、一日が夕方で終わってしまう。
それも幸せ。な〜んて思ってたら、アルツハイマー。もうボケボケ。

次第に雨脚が速まる中、Yさんと新宿の焼き鳥屋でダベる。
酒飲んで、焼き鳥食って、Hな恋愛話ガンガンして・・おやじな我ら〜。
あ〜あ、ラブラブ街道突っ走る正直者に、アテられっぱなしだわ〜。
フェロモンは、したいと思う人がいれば出るものなんじゃないかとの分析。
ふ〜ん、そりゃ〜モテる女だからこその意見だねぇ・・。

店を出ると、どしゃぶりだった。ここまで降ると逆に気持ちがいい。
あははは、めちゃめちゃ濡れてるよ〜。
ドバババッシャ〜ン!!信号待ちの交差点で車に思いっきり水はね上げられた。
プールに落ちた?ってくらい濡れ鼠。チョーむかつく〜!
・・・あ、感情の起伏。・・・少し嬉しかった。

7月12日・ 笑林サッカー。
もはやライバル!な川平慈英さんのチームと試合。
勝ったり負けたり、毎回名勝負を繰り広げております。
しかし、暑〜〜い!動いても動かなくても噴出す汗!紫外線の総攻撃。
頬がメラニンメラニン囁いてる。も〜、ど〜にでもして〜。・・歌ってみた。

「少林サッカー」にハマってるもりしゃんが得意気に取り出したのは、
ブルース・リーの黄色いつなぎ。GKのアレですわよ。身体にぴったり全身タイツ。
「これで敵が笑ってですね〜、シュート打てなくなるんですよ〜」
・・て、どんな作戦じゃい?・・あ、ほんとに笑われてる。(笑)
汗びっしょりの黄色い全身タイツは、続いてチョコボの元へ・・。
「キーパーはコレね」「う、はぁ・・」生真面目なチョコボはヌルヌルと着替えます。

W杯自主失業者・清水くんと、足首完治走れるもりしゃんの黄金コンビ絶好調〜!
フットサルのコツを掴んだ岸くんの活躍もあって、23対7の大勝利を飾りました。
カビラさんところの強い人がお休みだったから・・て説もありますが・・(笑)
特筆すべきは、新加入(なのか?)の21才・谷上翔くん。上手いんだ〜この若者が。
「小学生からフットサルやってました」あったの?小学生の頃に、フットサル。
そして、元・武南高校エースストライカー、江原さん。
メガレンジャーのブラック役だった美形クン。岸くんと戦隊つながりでゲスト参加。
すごいな〜、FC.BRAVO 、いろんなレベル上がっていくよ〜。

きょうから揃いのユニフォームになりました。
あぁ、やっと「チーム」って感じだわ〜。

こういうのに燃える男・もりしゃん。
やり遂げたオレに、大満足!
岸くんと江原さん、正義の味方に
挟まれた先生、なぜか緊張気味・・。
3人とも180センチくらいはあるのね。
にしても、江原さん、顔ちっちゃい!
7月14日・ はじめての社会。
マンションの総会ってのに出席して驚いたわ。
全41世帯から管理組合役員4人と防火管理者を決めて、議会を開く。
議題に賛成だと挙手。ひゃ〜、しっかり社会してるよ〜。
質疑応答にしても、問題提議にしても、次々と手が挙がる・・。
立派なオトナの受け答え。難しい熟語に意味不明なあたしはバカを思い知る〜!
学級会から数十年、普通社会人はこんなふうに成長するものなのかぁ・・。

そしてなにより、みなさん生活に対してすごく真剣だ。
積極的に関わりあうことで共通意識を高めようとしてる。
そうだよね〜、マナーの基準も各々バラバラだもんね〜。
これから始まるご近所付き合い!大丈夫か、自分!
40才過ぎて「わかりませ〜ん」キャラ作るのも許されまい。

しかし、なんで今までこういう社会と隔絶されて生きて来られたんだろう?
ウチの庭にも犬のウンコ落ちてたけど「あ、上に犬がいるんだな」でオワリ。
公式の議会で発言されるとスゴイ問題みたいだ。それが普通の意識か・・。
他者との距離感。都会のマンション特有の文化みたいなの出来上がってそうだ。
ひょっとしたら村文化より面倒なのかもしれない。
だ〜〜、気をつけよう〜っと・・。

7月15日・ なにもそんなに・・。
きょうの占いに「慣れたことに慢心して失敗する」とあった。
頭から離れな〜い。ぎりぎり貰ったリハビデオは、昨夜1回しか見られなくて、
台本もサラッと読んだだけ。朝やろうとしたら、来客や何やらで時間がなくなる!
やばいよ〜。当たりそうだよ〜。といいつつ出掛ける時間。

静岡第一テレビの「サッカー大好き!」番組ナレーション。
いつもと雰囲気が違うと思ってたら、新しいディレクターを紹介された。
今までは女性、幼稚園児への視線が母から父へ変わっていたのですね。

W杯直後とあって、ウルグアイ代表とのサッカー教室の様子なんかも挟まれる。
ちなみに「ロシア戦」の視聴率、静岡では80%突破したそう。さすが王国〜!
ベッカムヘアの子供も続々・・。真剣なプレーだ。遊んでる子がいないよ〜。
数年前まではTシャツがほとんどだったのに、今は全員ユニフォーム。
キーパーグローブまで本物だ。売ってるんだからスゴイ。
最近では、父兄もお揃いのジャージ着て応援してるんだよね〜。
七夕の短冊には「ワールドカップに出たい!」5歳児、マジです。でも次は無理(笑)

新しいディレクターは「やれる所までどんどん行きましょうか」の録音形式。
もちろんリハなし即本番!いつもより緊張して集中力全開で一気に録る!
は、早ッ!最短記録で録り終えた。・・出来はともかく。そして極疲労〜。

スタジオに顔を出すといってた今月移籍して来たマネージャーが姿を見せない。
ロビーで待ってたら「場所、間違えました!この地図、10年前のだったんです」
大汗かいて謝る姿に思った。もしかして・・同じ星座ですか?

7月17日・ あなた色に染めて・・。
オーディションテープを録りに事務所に出向く。
珍しく美しい女性キャラ。ふふん、やっと分かってくれたか・・(笑)
「僕はキレイな女の人のイメージなんですよ。以前、洋画でよくやってましたよね」
録音手伝ってくれる事務所の人に、なぐさめられる。
そうよ〜、金髪美女が多かったんだから〜。もう昔だけどね〜。

イメージってのは怖いもの。翼がヒットしたら少年役女優になってしまった。
性別も年齢も違う、少年の心理なんてわかるわけはないのに・・。
どの役も自分に近づけます。な〜んていう俳優さんがよくいる。羨ましい。
気持ちのままに作らず演じる。してみたいものだわ。

だけど、あたしのままが物語に出てきても、つまんないだけよね。
そのままの存在感がドラマを感じさせる人なら、まんまもアリだけど・・。
何もないから、いろんな色に染めやすい、とも言えるかも。
う〜ん、しかし天然の特徴には絶対勝てない。
特徴があればあったで、それしか出来ない、と。

最近は、かなり巾広く役をいただけるようになった。
でも広すぎて、相手がどんなイメージ要求してんのか分からなくなってしまった(笑)
オールマイティてのは、褒められたもんじゃないな。
どんな相手が何を要求してきても応えられるような強いキャンバスにしなければ。
他人のイメージの私は、私の想像を超えてる場合が多いんだもの。

7月19日・ 砂時計のとまどい。
言わなくていいことばかり言ってしまった。
だって、言いたかったんだもん。あなたが友達だから。
・・だけど、困らせて追い詰めただけだったかもしれない。

また、別の人に・・
言わなくてはならない言葉が言えなかった。
だって、みつからなかったんだもん。あなたが友達だから。
・・だけど、ここまで追い詰められた人に何が出来るの?

「同情」ってなんだろう。
されたら哀しい・・?悪いことなんだろうか・・?
あなたに降りかかった運命を、同じ気持ちになって考えられるとは思わない。
かわいそう・・よりは強く、せつなく、自分に引き受けるけれど、痛みはわからない。
あなたに同情したい。同じ気持ちで少しでも・・。
その悩みが、痛みが、悲しみが、わたしにやってくるのなら。

けれど、ひとはひとりだ。
怖れず立ち向かう勇気を持て!・・他人みたいに突き放す言葉。
大丈夫、きっとうまくいくよ。・・根拠のないあいまいな無責任。
そんなこと、とっくにわかってる。

7月20日・ ブラインドは掃除も面倒。
マンションのお風呂場の改修工事に立ち会う。
新築なのに信じられないミスがあったのです。・・窓が開かない!
前倒しの上だけが斜めに開くタイプで、ブラインド付。
2階以上の階は外開き、1階だけが防犯への配慮で内側に開く・・はずが、
ブラインドに当たってしまい、10センチしか開けられなかったのですよ〜。

設計図だけでも気づきそうなものを、あたしゃ使いながらしばらく気づかず・・。
そういうものかと思っていた!(笑)
キッチンに同じタイプの窓があり、ど〜もヘンだなぁ・・と。
そうです。私は騙されやすい女。

ブラインドをはずしてみたものの、策が見つからないで困っている様子・・。
「これ、カーテンにしたらどうでしょうね〜」と提案してみたところ、
「そうなりますと業者が違いますので、また手続き後の別の日に工事を・・」
管理会社の説明に、作業途中のおじさんが振り返る。
あ、暑い中作業、ご苦労様です。・・だ〜、めんどくさ〜い。
お好きなようにお任せした。以前より使いづらくなっちゃった。はぁ〜。

7月22日・ 犬役者。
アニメ「ふぉーちゅんドッグす」にゲストで呼ばれた。
婦人役、台本にセリフはひとつ。ダブりでネコ。その婦人が抱いている!
あ〜、きっと台本読まないで役ふったわね〜。ま、いいけど・・。

六本木ムービーに30分前に到着。と、隣の会議室でリハやっていた。
あれ?そういう習慣?・・よかった〜、まだ始まったばかり〜。
「うわっ!小粥ちゃん!どうして居るんだよ!」鈴木勝美がのけぞる。
カッキーとはデビュー前から知り合いだ。舞台もやったしね〜。
「今、この名前なの。でへへ〜」この瞬間が結構好きなんだよね〜(笑)
「何年ぶり?」「15年くらいじゃないですか?」水島裕さんとも再会〜。
昔話してたら自分のシーン見逃してしまった!・・うきゃ〜!

あたしは太ったおばさんだった。カッキーは老犬。
お互い若くない証拠だ。白髪混りの頭で、眼鏡を架け替えるカッキーは
どこから見てもベテラン声優さんの貫禄。そういう年齢なんだよなぁ。
吼える声とか上手いんだ。動物役者やね〜。・・て、これ、褒めてます。
動物の鳴き声をスラッと出来るってスゴイことだからね。
発声やらなんやらが思い通りに出来ないと声作れない。実力が分かる。
野沢雅子さんがラスカルの為に動物園でアライグマ研究してたのは有名な話。
声優の仕事って、ほんと奥が深いわ。はは。

あたしにも犬役が追加された。
「フャンフャン!」コンポコでほえてみた。ひとり懐かく感慨に浸って・・。

7月24日・ 金持ちおばさんと貧乏おばさん。
我が社は今期景気回復である。W杯の恩恵を受けまくり。
全世界で「キャプテン翼」増刷!おかげでボーナス本日支給〜!
自分で税金の計算して、自分で銀行行って、自分の口座に振り込み。
税金の額だけで150万円である。経理わかる人は受取額計算してみよう〜。
とにかく一気に大金持ちとなったのだった。ウハウハさ。

その足で、中古本屋さんに行った。
昨日、2〜300冊の本を売ったんだ。ほとんどハードカバー。
心理学、社会学、文化論・・。かなり貴重な本もあったと思う。
けれど本の買取価格ってのは、出版初日から何週目かで決まるんだそうで、
2ヶ月もすりゃ内容は関係なく駄本になっちまうとか・・。
「2160円ですね」え〜?そんな値段〜?1万円くらい狙ってたのに〜。
お財布にジャラジャラ入れる。なぜか貧乏になった気分で肩を落とす。ガックリ。

7月25日・ 脳なし猫は爪を隠す。
「どんなことをやりたいと思ってますか?」
事務所の面談てのがあった。面談?そんなの初めてだわ。
「やりたいこと・・?言えば、その仕事もらえるんですか?」
暑さや、もろもろで、尖がってる。今月入社のマネージャー相手に絡んでど〜する。
「顔出しはやりたくないです。生ナレーションも無理です。出来ません」
己の希望が叶う業界とは思わない。出来ない事だけ告げておく。

「あたしを何処にどう売るつもりですか?」むしろ聞きたいのはこっちである。
週末に録音するサンプルテープの原稿をチェックしてくれないのだろうか。
「自分のやりたいものを入れてくれればいいです」・・なんか、キレた。
私たちは商品として身を預けているのである。事務所は売る義務と責任がある。
そして所属者は、商品価値を高め、いかなる仕事にも対応するべく日々研鑽する。
ぬるい関係じゃ育つもんの育たない。戦略のない営業が成功するはずがない・・。
心に浮かぶ言葉の半分くらいが口から出る。やばい!ブレーキが効かない。

あたしは普段、かなり猫を被っている。
どの程度しゃべってしまうのが普通なんだろう・・?
たまに、相手の気持ちや立場、完全無視な人に会い面食らう。
そういう人は敵に回すと怖い。適当な笑顔で柵を設けるしかない。
思っている100%を出してしまったら、友達なんていなくなるもんね〜。
だけど、もう少し、言っちゃってもいいかなぁ・・な〜んても思う。

やりたいことに気がついた。
感情をオモテに出すこと。大声で叫んでストレス発散させること。
声優なら可能。ちーっとも俳優的ではないね。でも正直そんな感じだ。
カッコいいお兄さんの多いスタジオで、楽しい会話聞きながらラクにお仕事。
マネージャーに言ったら殺されそうだわ〜。はははは。
「ええ、子供たちに夢を与える仕事をしていきたいです」
・・だ〜!トリ肌〜っ!

7月26日・ 灼熱地獄、6分間。
「キャプ翼」収録後、お取り置きしてもらった椅子を受け取る。
朱色がキレイなベトナム製の折りたたみ椅子。6800円也。
バーゲンの魔物にとりつかれ「これ、ください!」の即決したものの、
考えてみれば友達との約束もあり、持ち歩くには重過ぎる。暑いし・・。
で、「来週までキープでもいいですか〜?」と支払いだけした。

うう〜先週より倍は暑いぞ〜〜。
これが微妙〜になんとか持てる重さで、送料千円かかるってのがまた微妙。
せっかく安く買ったんだから、お持ち帰り決行でしょうか、やっぱり・・。
しかも、お店で再会してみれば・・そんなに欲しくない・・(笑)
おいおい、先週のあたしは誰よ。めっちゃ「発見!」に喜んでたじゃん。
あるっしょ?試着までして買った服が、なぜか家では似合わない、みたいな。
自分の「気分」ってやつほど、信用できないものはない。

「やっぱ、いりませ〜ん」とは、言えません。
なにしろ運び屋として屈強な男子1名を確保し、連れて来ております。
「お願〜い、アタシの為に労働して〜ん」鼻にかかった甘い声で誘・・わなくても
細腕の高齢者に若者は優しくしてくださる。感涙、滝のごとし。ううう。
「かなりキますよ〜」あら〜すごい汗。改札まできっちり運搬。ありがとう岸くん。
さ、あとは駅から徒歩6分。ぐわ〜照り返し〜重い〜死ぬ〜暑い〜倒れる〜・・。
・・・捨ててしまおうかと思った。

梱包ほどいて、洗面所の鏡の前に置いてみた。
やだ〜、可愛い〜!大きさも座り心地もバッチリだわ〜。
苦労して手に入れたればこそ、思い出が染みて愛着になってゆくのね〜。
きゃ〜ん、いいわ〜この椅子。・・先週、正解!(笑)

7月28日・ お約束を果たす。
営業用の声のサンプルテープを録音。
セリフやナレーションを各種。制作会社に配られる試供品みたいなもんだ。
自分の売りと、買い手のニーズが曖昧だから、いつもイイカゲン・・。
てゆーか、あたしがこの業界入ってからず〜っとこのやり方ってーのは
いかがなものかと思うのよね〜。どの会社にもパソコンある時代なんだし、
ひとり3分間じゃなくてもいいじゃん。もっと有効な方法ないのかなぁ?

などど文句を(心で)たれつつも、フリーで営業する気は一切なし。
今まで完全お任せ主義で事務所のOKには従って来たけれど、今年の目標、
『自己満足』を達成すべく、戦いに出たのだ〜!おおお。
「座ってやってもいいですか?」「録音の順番、変えてもいいですか?」
「もう1回、お願いします!」・・この程度が思いっきりの自己主張〜〜!
アクアライトの最年長だもん、わがままくらい言っちゃえ〜。頑張れ〜。

このチャレンジが成功したかどうかはわかんない。
スタッフの気分害したかも・・。イヤミも言われたし・・。
でも、自分のサンプルだから自分が納得したいじゃないか。
お仕事だと監督さんの判断に従わなくちゃイケナイ。んなことは承知だ。
ウチで練習したベストの70%くらい演れたら・・が自己満足の基準。
ナレーションは30%の出来で終わってしまった・・。く〜!くやし〜!
持ち時間は15〜20分。1時間くらいかけて録って欲しいとマジで思う。

ところで今日は、先生の誕生日。
最近、背中や腰が痛いと嘆いていたので、ツボ押しの器具をあげた。
「俺、ツボ派じゃないんだよね」試すことなく放られた。ガ〜ン!
そういえば、この人から『ありがとう』といわれた記憶がまったくない。
あたしの誕生日にくれたのは「また歳とっちゃたね〜」の言葉だけだった。
なのに、この人は『自分は優しい男だ』と思ってるに違いないのだ。
先生が女の気持ちを理解してないこと、漫画読めば誰にでもわかるぞ〜。

7月31日・ エッジと安らぎ。
同じ世界で生きてはいない。
今、東京にいる・・というだけで、生きている世界は同じではない。
見えていること感じていること。気持ちのいい居場所は探せば、きっとある。
初台のライブハウス「The DOORS」で「しょぼたま」の音楽に浸って感じた。
気持ちの良い空間を表現する、音楽のチカラ。
日常を忘れるのではなく、本当を思い出させる。
影響に侵されて失ってはいないか?情報に盲目で明け渡していないか。
ゴツンゴツンと歌が当たる。そういう歌詞ではないけれど・・。

4年前「イルカタレ」というバンドで一緒に歌ってた尾引くんがステージにいる。
習い始めは同じだったのに、ホーメィを極め、トゥバで賞を取り、教える身だ。
「倍音S」はアルバムを発売し、「たま」と競演している成長ぶり。
あたしは音楽の才能全然なくて、ホーメィも上手くなんなくて、終わってる。
なりたい自分になる。迷いもなく進めば、そこに行けただろうか・・。

着付け師デビューした大野さんと、バリダンスの公演に出る上杉ちゃんが
「何かやらないの〜?」と期待の目で聞いてくる。
まだ何か探せと?表現してゆけと?
ここは確かに居心地が良くて、あたしは好きな自分に還れそうな気になる。
頂上を目指さない、お散歩するくらいのラクチンさでもいいなら、歩き出そうかな。
少しだけ、そう思った。