歎異抄(たんにしょう)
     
 親鸞聖人の教えとは異なる解釈が広まっていることを歎いた
                弟子唯円の著

 浄土真宗の開祖である親鸞聖人の著書は何ですかと問われると多くの方が「歎異抄」と答えると思います。

 実は、「歎異抄」は親鸞聖人の著書ではありません。師を直接知る唯円(ゆいえん)という人の手によって、親鸞聖人の語録とその解釈、さらに異端の説への批判を述べるものとしてまとめられたものなのです。

 「歎異抄」の書名は、「異議を歎く」という意味で、親鸞聖人が亡くなった後に、師の教えとは異なる解釈が広まっていることを歎いた弟子の唯円が、親鸞聖人の真意を伝えようと筆を執って完成させた書物です。
 従って、ここには師と同じ時代を共に生き、直接聖人の声を聴きとった弟子にしか書けない生の声が息づいています。

 「善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人をや」(善人でさえ浄土に往生することができるのです。まして悪人はいうまでもありません)という有名な一文があります。しかし、私たちは「悪人が救われるなら善人が救われるのは当たりまえ」と思っていますので、この文には納得できません。 

 今年の後半から安正寺では「なぜ?」と問いながら「歎異抄」を味わっていきたいと思っています。
  
蓮如上人による「歎異抄」現存最古の写本