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熊本県長洲町安正寺

エコウ10月号第442号
2012年10月1日発行

真宗興隆

至心回向 I

 お盆を過ぎ、御彼岸を過ぎて、穫り入れの十月を迎えましたね。狭い日本ですけれども、お天気の状況は大変な違いですね。大変な雨に大被害を受けられた地区。豪雨、地滑り、地震、竜巻。被害の後に何とか立ち直り、もとの仕事を再開された方の喜びの中にも、御縁ある方々の援助を大変に喜んでいらっしゃいましたが、人間一人ではとても生きては行けない物ですね。変化し続ける自然と人間世界も、あらゆる現象状態の一つ一つも、その物だけでは成立しません。限りない無限の御縁によって保たれています。それを諸法無我と表しています。自分の事は自分でする〃と自信を持っておっしゃる方がありますが、年老が重なれば思うように何事も出来ませんね。でも若ければ出来るでしょう。と、思って見ても、決して出来るものではありません。いや出来ました。と、思っても、やはり私以外の物や力の働きが無ければ何事も出来上がりません。釈尊が最後の遺言に自らに依れ。と、おっしゃっておられますが、直ぐ後に、法に依れ。と附け加えていらっしゃいます。自らに依るその事も、法の働き無しでは成立しない事をあらはしています。自らの思慮分別に立って行っても、思うようには成り立ちませんね。それは、思慮分別が、現在の自然の法則にかなっていないからなんです。親鸞聖人の自然法爾抄に、自然は、おのずからしからしめるなり。それは自然の法則に依る。と示されます。一切の縁が結ばれて、一切が成立しています。法則に反しては何事も成立は不可能です。でも不可能と言っても、現実は成立しています。個々人の思惑を超えて法則に則って現象を表現して居ます。其処に本願他力があります。心の奥底に、真実なれ〃と働いている願力があります。如来の智慧の世界からの呼びかけなんです。本願精神の中核は、一心です。一心の他に何もありません。それは至誠心を以て示されています。私達の感覚では至誠心と表現されますが、本願では信楽(シンギョウ)と示されて居ます。信楽を、親鸞聖人は真実信心と戴かれました。ツマリ如来様の本心を表します。阿弥陀仏の本願を別願と言います。一切の佛、菩薩は本願をイノチとして働いて下さっています。阿弥陀仏は唯一人。特別な願を持って成就して、その功徳を平等に一切の衆生に回向して下さっています。一心なる真実の国である御浄土を成就して、全ての人の心の奥底に開いて挙げたいと、願成就して、南無阿弥陀仏の声となられました。それを名号と云って、私達の御念仏の力となって下さっています。名は因を表し、号は功徳を表します。如来様の因は真実心に依る一切の衆生を、真実に生きる者とする為に、一切の物事の中に真実のイノチを成就して下さってありますから、全生活が真実のイノチに支えられてありますから、御念仏の声と共に真実の生活に変えさせて下さるんです。それを転悪成善と言い、間違いだらけの人生を、即座に修正して真実への道に変えさせて下さるんです。それは真実からの道に乗せて下さってあるからです。如来からの御招きの道。既に如来に成られた道。その道を其の侭私達一人ひとりの生きる場であるこの身と成って働いて下さる働きの全体を表して南無阿弥陀仏の声となって下さってあります。御念仏は障りなき真の道路です。道はみんな平等に正しく生きる道。路は私だけの特別な路。みんなも私も平等に正しく生かされる大道。南無阿弥陀。