暮らしの中の仏教語
 
「精進」 (しょうじん)

 最近、肉や魚を使わない精進料理がちょっとしたブームになっています。季節の野菜やお豆腐を使った精進料理は、飽食時代ともいわれる現代社会の中では、ヘルシーでしかもダイエットにも効果的な食事として人気を集めているようです。

 この「精進」という言葉は、お釈迦さまが初めて行った説法とされている「八正道」(八つの正しい道)という教えの中で用いられた言葉です。「八正道」には、私たちが歩むべき八つの道である「正見」「正思」「正語」「正業」「正命」「正精進」「正念」「正定」がありますが、それぞれの「正」とは「正しい」、「精進」とは「努力」を意味します。ですから、「正精進」とは「正しい努力」と解釈できるわけです。

 しかしながら、この「正しい努力」とは具体的にどのような努力なのかが、いま一つピンときません。というのは、私たちが自分で正しい努力だと思っていることが、他人にとっても正しい努力になるとは限らないからです。

 実は「八正道」という教えで説かれている「正」とは、結果や損得を優先してしまうような私たちの身勝手な判断基準による正しさではなく、お釈迦さまの教えをよりどころとした偏りのない正しさのことをいうのです。
 もっと言うと、結果や損得に振り回される必要のない自分を、その教えを通して見つけ出していく歩みを「正精進」といます。