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「脊髄麻酔記」
3. まな板の上の鯉

覚悟は決めたものの、なかなかやはり緊張する。どきどき。
が!、
ナース達は私の気持ちなどおかまいナシに、
どんどん手術前の準備作業を進めてくれる(苦笑)。

まずは、病室で、ナースに指示されるがまま裸になり横になった。素っ裸。
おまけに彼女にお尻を向けて‥(とほほ)。この辺で既に相当ハズカシイ。
が、さっきナースが持ってきた金属トレーには
(まるでコントのような)巨大な注射器が載っていた。
あの注射器の今後の行方を思うと、もっともっとハズカシイ。

(ねぇねぇさっき病室入る時鍵してくれたよね?忘れてないよね?)

そんなことを口に出せる図太さもなく‥。

(わかったわかったから(?)お願いぃぃどうかお手柔らかに頼んますぅ‥ひぃ)

しかし、ナースにとってみれば「帝王切開」のお決まりコース!。
「じゃあ、浣腸するねぇ〜」と、とても明るい。そして‥‥。

くぉ‥ぬぅ。

もう一本入れるねぇ〜」「へ?(私)」「ごめんねぇ〜」
(‥あの、あのね。全然ゴメンなんて思ってないっしょ?ないっしょ?涙)
あの感じ。
一言でいえば‥。「とても気持ちが‥よろしくない」。
そしてペラペラのガウンを一枚まとった超臨月腹オンナ、トイレへ。
なんだか大変だったような気もするのだけれど、
今となっては、トイレでのことはよく覚えていない。
その後の記憶の方が凄すぎて‥。

あ、でも。
2度目くらいにトイレに行こうとしていたら、
見舞いに来てくれた両親に廊下で会ったのだった。

「あーごめぇん。電話するの忘れちゃった。
 さっき決めたんだけど、これから切って赤ちゃん出すことにしたんだー。」

と歩きながら話すと(こっちは先を急ぐしっ)、
両親ビックリ。
(そりゃそうだよなー。今日のところは見舞いのつもりで来たのに、
 間もなくアカンボが出てくる事が「決定」してしまったのだ)

「えーーーー!。ちょっとちょっと。ちょっとーー。」

と母に声をかけられるも、
「ごめん〜、今浣腸中〜。」と振り切った、ことは覚えている‥。

出すべきものを出すと、分娩(オペ)室へ入るよう云われた。
入ってみると、
担当看護婦さんが、剃毛用の泡クリームを泡立てているところだった。
遠い昔子供の頃行ってた床屋さんで見たことのあるアレと同じだ。
「はーい、脱いでその台の上に載ってくれる?」
ガウンを脱ぎ、人前で「出っ腹の素っ裸」で歩き、
(力士とはこういうものか‥と思ったのを覚えている)
コケないように手を貸してもらいながら、そろりそろりステップを昇る。

先ずは台に腰掛けて、背中の産毛を剃る。
「お腹切るのに、背中も剃るんですかぁー」と聞くと、
(シツコイようだが、この間ずっと素っ裸ね)
麻酔を打つからねっ、と教えてくれた。
背中に麻酔を打つ、ことさえよく解らなかった不勉強妊婦であることが発覚(がはは)。
しかし‥。「うつ」?‥確か打つって言ったよなぁ?。
げっ。もしかして骨に打つヤツかっ???。
ど、どんな感じなんだよ‥‥。えぇいっ恐くて聞けないよー(涙)。
頭の中だけでは足らず、口のほうまで緊張がぐるぐる回り始めた。
が、私のグルグルなどおかまいなく看護婦さんのカミソリはすいすい動く‥。

今度は台の上に仰向けになるように言われた。
あぁ‥これはまさしく<まな板の上の鯉状態>だ。
あぁ、私は鯉。鯉なのよ‥。

今度はお腹側を剃られ、
次は両足を開き、ナース2人にお毛々を剃られた。
一人はベテラン。もう一人は新米。
新米彼女が剃ってくれた「左側」は、心なしかヒリヒリした‥(涙)。

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